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ジエビネ (Calanthe discolor) について

ジエビネ (Calanthe discolor) - Ranyuen

混乱を避けるために知っておきたいこと

ジエビネ (Calanthe discolor) は、かつては、北海道から沖縄にかけての広い地域にたくさん自生していた原種で、最も一般的な種類です。主に、落葉広葉樹の雑木林の他、常緑広葉樹、松林、竹林などの林床に下草として自生していました。私が住む千葉市では、私が中学生の頃 (昭和45年) までは、千葉駅や稲毛駅から歩いて行けるくらいの近い里山でも、たくさん見られました。残念ながら現在では、採取と開発により、見ることはできません。

文献によっては、スズフリソウ、カマガミソウ、などの別名および、花色の違いから、アカエビネ、ダイダイエビネ、ヤブエビネ (緑弁白舌) などの名称が記されているものもあります。しかし、私の知る範囲では、いずれの名称も現在使用している人はなく、おそらく昔の文献をそのまま引用したものではないか? と考えられます。現在、愛好家の間では、ジエビネと呼ぶのが一般的で、次いでエビネ、あるいはエビネランと呼ばれることもあります。

日本の広い範囲に分布するため、同一種でも自生地の気候や環境の違いにより、外観にもかなりの変化が見られます。例えば、伊豆七島や千葉県南部など、比較的暖かい地域では、大型で光沢のある立葉となるものが多く、逆に、寒さが厳しく積雪のある場所では、やや小型の個体が多く見られます。

徳之島や沖縄に自生する系統も、立ち性となり大型でゆったりと咲くものが多くあります。それぞれにトクノシマエビネ、オキナワエビネ、あるいはカツウダケエビネと呼ばれています。自生地では3月頃に開花します。また奄美大島に自生するアマミエビネ (Calanthe amamiana) も分類上、ジエビネの変種 (Calanthe discolor var. amamiana) として扱われることもあります。自生地では2~3月頃に、白から桃紫色の美しい花を咲かせます。トクノシマエビネ、アマミエビネともに、自生地ではとてもきれいな花を咲かせますが、残念ながら東京 (関東周辺) での冬期の無加温栽培では、温度不足のため生育が休止してしまい、自生地のようにりっぱな花になりません。最低温度を10℃くらいに保つことで、冬期も休止せず、とてもきれいに咲きます。

性質はとても丈夫で、耐暑・耐寒性もあり、日本中の広い地域で庭植として育てることができます。花色はくすみがあるものの、エビネの仲間 (Calanthe) の中では最も豊富で、茶・紅・緑・黄から橙・黒色にちかいものまであり、春咲きエビネの品種改良をする上でかかせない種類です。日本には、このように変化に富むジエビネがたくさん自生していたおかげで、これらを交配親に使用することができ、現在のようなバラエティ豊かな春咲きエビネにまで発展しています。

「エビネ」という名前が引き起こす問題

ジエビネ (Calanthe discolor) - Ranyuen

ジエビネ (Calanthe discolor) - Ranyuen

今では、エビネという名前は、植物に興味のある方なら知らない人がいないほど有名です。以前は、ある程度の知識を持ち合わせていた少数の人々が関心を示すだけで、その人達のほとんどがエビネという名前を耳にした時、その場面では何を指しているのかをわかってていたため、大きな問題が生じることはありませんでした。しかし、昭和50年くらいから始まった、野生ラン栽培の大ブームでエビネが一般の人々にも知られるようになると、それまでは特に気にせずうまく使い分けていたエビネという名前が実は特定のひとつの種、Calanthe discolor (カランセ ディスカラー) を指す言葉ではなく、Calanthe discolorを含むその他の多くの種 (日本には約20種) や、あるいはそれらが所属するグループ名でもあり、専門家を除き何を指しているのかがわからないという問題が浮き彫りになりました。別の言い方をすると、「エビネ」という言葉は人によりあるいはその時々によりそれぞれ指すものが異なり、

  1. 属名 (エビネの仲間のグループ名) = Calantheを直接指す場合
  2. そのグループに属する様々な種 (キエビネ、ニオイエビネ、キリシマエビネ他) を特定せずに指す場合
  3. その中のひとつの種 (Calanthe discolor) を特定して指す場合の和名

があり、これを理解している人でなければ、何を指しているのかがわかりづらいという問題点がありました。このためエビネをよく知る人達の間では、誤解を減らしなるべくわかりやすく伝えるため、種としてのエビネCalanthe discolorを指す場合には、単にエビネとは言わず、「ジエビネ」という言葉を用いるのが普通です。また、世界的なラン展などでは、世界の人にも通じるように、エビネ属 (エビネの仲間) を表す言葉としてCalanthe (カランセ)、そのうちの一種ジエビネを指す場合には学名のCalanthe discolorと呼び、を区別しています。

ジエビネ (Calanthe discolor) - Ranyuen

ジエビネ (Calanthe discolor) - Ranyuen

これらは、エビネの仲間をよく知る人の間では、すでに常識として定着しています。しかし、近年になりなぜかこの問題が再度取り上げられてしまいました。残念なことに過去からの経緯を知っている人のほとんどは、インターネット等に興味はなく、現在の状況がわからないため、その事を知る人はほとんどいません。しかし、現在の状況を知ると何で? 今更? とおどろく人が大勢いるというのが現状です。 このまま時間が経過し、現在に至までの経緯を知る人がいなくなることで、多くの人がたずさわり、長い時間をかけてようやく定着したジエビネという名前が失われ、再度わかりにくくなってしまうのは残念です。今後、私たち花卉園芸の関係者だけではなく、植物分類学等の有識者をまじえ、再度の検討をし、エビネの仲間が健全な園芸としてわかりやすく発展することを願っています。

~解決案執筆中~

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