「心の農業」とは

人には通常、心というものがあります。そして心には人に褒められたり相手が喜んでくれたりすると自分自身も嬉しくなるという性質があります。

この心というものに重きを置けば、仮に多くの収入をのぞめなくても、より良い生き方をするための選択肢としての農業もあると考えています。

心の農業1

例えば地域の直売所で自分が作った作物に対して、「この人の作った、○○が最高!」という言葉を直接現場で耳にする事が出来るようなシステムがあれば、私ならばそれが励みとなり、更に喜んでもらえるように、より一所懸命良い物を提供しようと考えます。

率直に物事を考え、実直に生きるのが、やはり人としての一つのあり方ではないでしょうか。

このように人間特有の心というものを最大限に生かすやり方は、農業だけでなく介護や建設などの他の職業にも応用できると考えています。

世の中でTPPという言葉が出る直前の事です。私は市長が初めて参加した市の農業振興会議に誘われました。当時から私は既存の品種では、近年の急激な気象変化に対応できなくなる可能性を危惧していました。

また近い将来農産物においても、自由化が議題になる事が時間の問題とも考えていました。その2点の懸念から会議の中で品種改良の必要性を真っ先に挙げて話をしました。

「もし海外からコメが一俵三千円で入るならばそれはありがたく受け入れる、その代わりに一俵十万円のコメを開発して世界に売り飛ばしてやれば良い。

コメは例え話であって開発する作物は何でも構わない、千葉市独自のものを開発すれば良い、市の既存の施設を使えば容易に出来るであろう。

農業を単に農業(作物の生産)として捉えるのではなく子供達の教育や里山の保全、食育も含めて広く農業として考えれば市民の理解も得られるだろう」と提案しました。

途中市長からは森田さん(県知事)に話しておくという言葉もあったのですが、私はそれに対し、世界を相手にするならば、県ではなく千葉市くらいの大きさがちょうど良いだろう、と答えたように記憶しています。

地域独自の品種を武器に発展を目指す

これは市の農業戦略の一つとして、日本の農業のあり方のモデルケースになれば、と私が昔考えた事です。

まずは国内外を始め、広く販売を行うに当たり真っ先に考えられる地域間の価格競争を避ける事が大事であると考えています。

海外は始めからは大きな市場になるとは考えにくい、千葉県全体で同じ品目を作るよりは例えば海外への出荷を考えた場合、千葉市、八街市、富里市、東金市等それぞれが全く別の独自品種を作れば、地域間の競争を避けられるでしょう。

当時私は、この際のまとめ役がいて成田空港から世界へ出すという構想でした。まとめ役には「○○農協成田空港支店」のようなものを設置すれば良いと考えていました。

また子供達の食育の事も考えていました。香りや食感や色合い等に特化した食育、あるいは地産地消専用の品種を開発する事により、学校給食を通じて子供達の感覚 (食覚や季節感) を養うにも有効な上に、それを作る農家の収入にもつながります。

因みにこの程度のレベルの品種改良は世間で考えるほど難しいものではありません。 仮に栄養系の品種を中心に考えれば、市の既存の施設を使えば苗生産は簡単に出来るでしょう。

その苗を市内の生産者に安価で提供し栽培してもらい、収穫されたものを子ども達の食育専用として市が買い取る、または地産地消専用として販売する。このようなサイクルが出来れば、生産者との繋がりが不可欠となるわけです。

更にこの開発の現場を子供達の学習の場とすれば、農業に興味を示すキッカケとなる事にもつながります。

心の農業2

例えば”丸いキュウリがあったらいいな”等、どんな野菜があれば嬉しいかを子ども達に提案してもらうことで、農業がより身近で、多くの人たちが関わる大きなものとなるのです。


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コラム筆者:山本裕之

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