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ドラマチック農業のすすめ [7] 〜バイオカプセル育苗ちゃん〜

食糧危機を救えるか ? バイオカプセル育苗 (いくえ) ちゃん

先日、下町ロケットという番組を見て心が熱くなりました。下請けの町工場がもつ特許を題材とした話でした。 そういえば私も昔、植物の簡易馴化装置の特許を持っていたことを思い出しました。 ちょうどバブルの頃の話です。日本でも有名な一部上場の企業2社がエビネの品種改良に参入してきたのです。私のところのような小さな会社は資金面では到底勝つことはできません。 小さな農園がこれに押しつぶされない方法としては技術力や、その特許で対抗するしかありません。そんな特許のうちひとつがこれです。

近年の急激な地球環境の変化(悪化)を考えると、品種改良やバイオテクノロジー技術によるフラスコでの苗生産も早急に世界中で行う必要があると考えています。 これはフラスコ内で無菌的に作った苗を、特別な設備を持たなくても、例えば途上国や小ロットでも簡単に順化が可能な方法です。 今ではその2社とも撤退しましたので、世界の食糧危機に対応するためのひとつの方法として利用していただければ幸いです。

【発明の名称】 培養植物の育苗方法

【要約】

【目的】

培養植物の馴化方法を改良し、大規模な装置なしで容易に丈夫な苗を育てる。

®バイオカプセル育苗 (いくえ) ちゃん

【構成】

滅菌された培地を備えた滅菌びんで最適条件を維持して発芽、生育させた苗を、びんから出し根を水で洗浄し、実質的に密閉された透明容器に移植し、水分を加えず、蓋はしたまま、室内の適温・適光に最も近い場所に置いて馴化育苗し、新たな根毛が十分発生して丈夫に育った苗を培養土に移植する。

【特許請求の範囲】

【請求項1】

培地を備えた容器内で培養された培養植物を馴化して培養土に植かえするにあたり、前記培養植物を、前記培地を備えた容器から出して実質的に密閉された透明容器に収納して馴化した後、前記培養土に植かえすることを特徴とする培養植物の育苗方法

【発明の詳細な説明】

【0001】

【産業上の利用分野】

本発明は培養植物の育苗方法に係わり、特に培地で培養された植物を培養びんから出して培養土に植かえする前の外の環境に馴化させる馴化方法に関する。

【0002】

【従来の技術および発明が解決しようとする課題】

品種改良および高級種の大量供給を計る等の目的で、近年目覚しく発達しているバイオ技術を応用して、各種花卉、野菜、観葉植物等が、種子あるいは植物体 の一部から培養、育苗されている。 ランの一種、エビネの育苗方法を図7に示したが、従来、培養びんでのびん育苗の後、根の洗浄をし、次いで苗の殺菌をし、水ごけで根巻きをし、コミュニティポット (以下CPという)に寄せ植えを行ない、このCPに寄せ植えしたものを馴化室で馴化育苗して苗を培養びん外の環境に馴化させた後、培養土の入った 鉢に植かえしていた。

【0003】

より詳しくは、滅菌されたびん5に滅菌された最適の培地6を入れ、エビネの種子を適量加え、適温を維持して発芽させ、幼小体を最適組成の培地6に1~2 回植えかえながら生育させるのが培養びんでのびん育苗である(図5) 。この滅菌されたびん5内で生育した苗2aを、びん5から出し、根の洗浄をし、多くは、苗をベンレート (デュポン社製品) 、ダイセン(ダイセン社製品) 、ストレプトマイシン剤などを希釈した殺菌水で殺菌する(苗の殺菌),この殺菌は 苗2 aの生育に伴って排出された老廃物を洗い流し、この後の馴化期間におけるカビの発生を防止する目的で行なわれている。殺菌された苗2aを1本ずつ永ごけ4で巻き(水ごけで根巻き)、CP3に寄せ植えする(CPに寄せ植え)。このCP 3に寄せ植えしたもの(図6)を馴化室(図示せず)で温度・湿度・光を調節し、適宜水やりをして馴化育苗し、苗2aを培養びん5外の環境に馴化させる(馴化室で馴化育苗) 。尚、小規模で馴化室のない育苗の場合、生育に適した時期を選び、水槽や発泡スチロール箱にCP3を入れ、ガラス板やラップ類でカバーをし、霧吹き等で湿度管理を行ない馴化室に代えていた。丈夫に十分生育したCP の苗2cを馴化室から出し、培養土の入った鉢に植かえしていた(培養土に植かえ)。 培養土に植かえされるまでに生育した苗は厳しい自然環境でも育てる事ができる。

【0004】

しかしながら、上記従来の育苗方法には次の様な難点がある。 ①良好な苗2aでも40~50日、植物の種類によっては4~5カ月も馴化室 内にて最適条件下で育苗しなければならなかった。 ②馴化室のない場合、生育に適した時期を選び、水槽や発泡スチロール箱にCP3を入れ、ガラス板やラップ類でカバーをし、霧吹き等で湿度管理を行ない馴化室に代えていたため、時期が限定され、温度、光、湿度の管理が大変であった。

【0005】

③滅菌されたびん5内で生育した苗2 aは、注意しても、苗の殺菌、水ごけで 根巻きおよびCP3に寄せ植えする際に根や葉を傷める場合が多かった。 ④また、培養びん5に密閉された完全無菌の小空間から外界に移された環境の変化と、前述の根や葉の傷みから、生育が遅れ、活着率が低下することも多くある。

【0006】

⑤最近、びん育苗の状態である程度生育した苗を培養びん5のまま一般の愛好家が購入して育苗を試みる例が増加している。しかし、根の洗浄、苗の殺菌、水ごけで根巻き、 CPに寄せ植え、馴化室で馴化育苗の各段階の操作の困難性、特 に馴化室装置の設備およびそのコントロールが一般の愛好家には難しいため、結局うまく育苗できないケースが多い。

【0007】

【目的】

本発明は、上記種々の難点となっている馴化段階に着目し、大規模な装置を必要とせず、植物本来の生命力を引き出し、丈夫な苗を育てる馴化方法を提供することを目的とする。

【0008】

【課題を解決するための手段】

 上記の目的を達成するために、本発明による培養植物の育苗方法は、培地を備えた容器内で培養された培養植物を馴化して培養土に植かえするにあたり、培養植物を、培地を備えた容器から出して実質的に密閉された透明容器に収納して馴化した後、培養土に植かえするものである。

【0009】

【実施例】

 本発明による培養植物の育苗方法を図面を参照して詳述する。 図3に示すように、ランの一種、エビネの育苗方法としては、びん育苗の後、 根を洗浄し、馴化用カプセルに移植し、馴化育苗して苗を培養びん外の環境に馴 化させた後、培養土の入った鉢に植かえする 。

【0010】

滅菌された最適の培地6を備えた滅菌されたびん5に、エビネの種子を適量加え、適温を維持して発芽させ、幼小体を最適組成の培地6に1~2回植えかえながら生育させるびん育苗(図5)は従来と同様である。この滅菌されたびん5内で生育した苗2aを、びん5を割って出し、根の近辺を水道水のような上水で苗2aをまとめたままの状態で洗浄する(根の洗浄)。この洗浄は、培地6と、苗2 aの生育に伴って排出された老廃物を洗い流すものである。この後の馴化期間における黴の発生を防止する目的で行なわれていた殺菌は、健康な苗では必要ない。びん5から取り出し洗浄したひとかたまりの、または数本にほぐした苗2a を、図1に示すように実質的に密閉された透明容器である馴化用カプセル1に移植する(馴化用カプセルに移植) 。尚、この馴化用カプセル1の大きさおよび形状は、ひとかたまりのままの苗2 aを収納可能な大きさおよび形状であれば特に限定されない 好ましくは、滅菌されたびん5が丁度収納可能程度の大きさおよび形状がよい。また 、材質としては透明な公知のプラスチックス、ガラスが好適である。蓋1 aは容易に開閉可能であることが好ましく、大部分が透明であれば蓋 1aおよび底面 l c部分程度の表面積は不透明でも差し支えない。この馴化用カプセル1に移植する際、根の洗浄により付着した水以外に水分は加えない。苗2 が収納された馴化用カプセル1の蓋1 aはしたまま、室内のうち適温·適光に最 も近い場所に置く (室内で馴化育苗) 。時々開けるくらいの蓋1aの開閉は問題ない。

【0011】

蓋1 aをしたままの馴化用カプセル1内は、外部からの空気の流通は可能であるが、水分即ち、湿度の変化は殆どない。しかも移植する際に、苗に付着した水以外に水分は加えないので、馴化用カプセル1内の合計水分はほぼ一定である。このため、苗2は水分を主に葉から蒸散させ、蓋1 aおよび側面1 bで水滴となり底面l cに貯まった水分を根から吸収し、これを繰返すことにより組織の必要箇所に蓄えながら生長する。このように一定量の水分しかない馴化用カプセル1 内で生長するため、滅菌された培養びん5内でのびん育苗時に過剰に吸収していた水分を減少させ、ひきしまった苗2となる。適温であれば1週間ほどで新たな 根毛2 bの発生が馴化用カプセル1の側面1 bまたは底面l cを通して確認される。根毛2bは植物にとって消化器官に相当するものである。本発明では、びんからの移植にあたり根にかかる負担を最小限に減らし、この重要な器官である根毛2Dを速やかに発育させる。また、本発明による培養植物の育苗方法では、葉部のみならず根まで、植物全体を観察可能である。ほぼ全ての苗に新たな根毛2 bの発生が確認されたら、適宜希釈した液体肥料を施すことができ、生育が早められる。馴化用カプセル1内に余分の水分がなくなり、 丈夫なひきしまった苗2となったら培養土に植かえする(培養土に植かえ) 。この方法では、従来行なわ れていた水ごけ4で根巻きしてCPに寄せ植えする行程は省略できる。

【0012】

或いは、苗を洗浄した後、苗2aを水ごけ4で巻き、CP3に寄せ植えあるいは一本植えしたまま、馴化用カプセル1に収納し、蓋1 aはしたまま、室内のうち適温適光に最も近い場所に置いて、室内で馴化育苗することも可能である (図2) 。こうして苗2aを上記実施例と同様に培養びん5外の環境に馴化させた後、CP3から、培養土の入った鉢に植かえすることも可能である( (図4)。

【0013】

滅菌された培養びん5内で生育した苗2aは、養水分を培地から十分に吸収して茎葉部は十分生育しているが、水分過多であるため根毛の発達は少なくひ弱である。このいわば水ぶくれしたひ弱な苗2aを根を傷める行程(洗浄、殺菌、水ごけで根巻き、寄せ植え)を経て、CP3に寄せ植えして、従来のように馴化室内で最適条件にして育苗しても、活着までに時間がかかり、活着率も低いと考えられる。

【0014】

本発明による培養植物の育苗方法では、根を傷める行程を最小限にして、根からの吸収、葉からの蒸散を繰返すことにより、水ぶくれしたひ弱な苗2aから、余分な水分を減らし、ひきしまった苗2に育苗するので活着率は高く、植かえ後の養分吸収も横溢で生育がよい。また、外部の環境は必ずしも生育最適条件ではなくても、苗は植物体本来の生命力により外界の環境に逞しく適応しつつ生育する。

【0015】

尚、ほぼ全ての苗に新たな根毛2bの発生が確認され、馴化用カプセル1内に余分の水分がなくなり、丈夫なひきしまった苗2に生育したら、馴化用カプセル1の底部1 cに水抜き穴をあけ、馴化用カプセル1に培養土を入れ植木鉢とすることも可能である。 ここでは、エビネを例に説明したが、植物の種類は実施例に限定されず、また、種子からの発芽のみならず植物体の一部から培養する場合にも適用されるのは言うまでもない。

【0016】

【発明の効果】

以上の実施例からも明らかなように、本発明による培養植物の育苗方法では、培地を備えた容器内で培養された培養植物を馴化して培養土に植かえするにあたり、培養植物を、培地を備えた容器から出して実質的に密閉された透明容器に収納して馴化した後、培養土に植かえするものであるので、苗の殺菌は不要、馴化室なしでも容易に生育が可能となり、水やり不要なので湿度コントロールに煩わされず、根毛の発育が早く、肉眼で確認でき、確認後は施肥可能につき、施肥時期が早まるので培養土への植かえが促進され、かつ生育の早いひきしまった丈夫な苗が得られる。

【図面の簡単な説明】

【図1】

本発明による培養植物の育苗方法の馴化を説明する図である。

【図2】

本発明による培養植物の育苗方法の馴化を説明する他の実施例を説明する図である。

【図3】

本発明による培養植物の育苗方法を説明する図である。

【図4】

本発明による培養植物の育苗方法の他の実施例を説明する図である。

【図5】

培地を備えた容器で育苗された培養植物の状態を説明する図である。

【図6】

CPに寄せ植えされた苗を説明する図である。

【図7】

従来の培養植物の育苗方法を説明する図である。

【符号の説明】

1 ...馴化用カプセル 1a...蓋、 1b...側面、 1c…底面
2…植物(苗)
2a…びんで培養された苗
2b...根毛
3 ...C P
4-..水ごけ
5…びん
6 ...培地

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コラム筆者:山本裕之

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