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幻のランを求めて マツゲカヤラン編

マツゲカヤラン (Gastrochilus ciliaris)
〜ミステリアスな運命に翻弄されてしまった幻のラン〜

今から約40年前、私がちょうど20才の時のできごとです。大学の先輩にあたる小清水さんが、幻のラン「マツゲカヤラン」について書かれている資料を見つけてきました。それはおそらく、進化研にいた前川先生の資料のコピーだと思います。

それによると、「戦前に屋久島のモッチョム岳の裏側を流れる川の中に、木の枝に着いた状態で落ちていたものを発見し、唇弁のふちに細かい毛があることから、和名をマツゲカヤランとした」ということが、旧カナ遣いの文字で書かれていました。

マツゲカヤランは、日本の野生ランに詳しい人の間では、過去にたった一度だけ発見され、何十年もの間、再発見されていない幻のランとして知られていました。私が宝探しのターゲットにするにはうってつけであり、申し分のない背景の幻のランでした。

この時マツゲカヤランについての手掛かりをもらった私は「いつかこのランを絶対に探す」と誓い、まるで宝探しをする冒険者のごとく心を躍らせたことを今でもはっきりと覚えています。その後、私はこの文献を手掛かりにしてマツゲカヤランを探す目的で屋久島を何度も訪れ、山中をとことん歩き回りました。当然のことですが、マツゲカヤランが見つかったというモッチョム岳の裏側に位置する川も徒歩で行ける範囲はすべて探したのですが、結局見つけることはできませんでした。卒業後もこのランのことがずっと気になっていました。

今から約30年くらい前、東京農大の野生ラン研究会の学生たち数人と屋久島へ行った時のことです。頭上に開花していたツリシュスランの写真を撮ろうとカメラを手に大木によじ登ると、ツリシュスランの生える枝の裏側に何やらモミランに良く似た小さなランがつぼみの状態で10数株へばりつくようにして着いているのを発見しました。瞬時にそれがマツゲカヤランであることを直感し、木の上で「マツゲカヤランだ!」と大声を上げてはしゃいだことを今でもはっきりと覚えています。標本として数個体持ち帰り、その後一か月程度で開花しましたが、確かに唇弁のヘリには細かな毛を確認することができました。 こうして長い間、幻のランと言われてきたマツゲカヤランが再び世の中に現れました。

この個体は当時、原色日本ラン続編の予定があるとの事で、羽根井氏に手渡しました。私の記憶では、担当していた2人の画家のうちどちらかがこれを描き、その後、筑波の橋本保博士を経由して鈴木吉五郎氏がこれを栽培すると聞きましたが、その後どうなったかは知りません。

いずれも日本のランのベテラン達が何人も関与しているため、どこかに正式な記録が残されていると考えていますが、その記録が見当たらないのか、近年にマツゲカヤランが60年ぶりの2度目 (正確には3度目ですが) の発見として報じられていました。最初の発見時と同じく折れた木についた状態で見つかったとの話を聞きましたが、事実ならば実にミステリアスで興味深いことです (希少な着生種がこのような状態で発見されることは非常に稀なことです)。ちなみに私は、マツゲカヤランはとても小さいうえ樹上の高位置に着生するために、発見が困難であって、他の希少なランと比較するとそれほど少なくはなく、ある程度の個体が存在しているだろうと考えています。

実をいうと、私が発見した場所は屋久島でも有名なスポットに通じる道の真上にあたり、マツゲカヤランの自生する下を何千人という人が通っているはずなのです。にも関わらず、未だに誰にも見つからないというのもおもしろい事柄です。

私は近いうちに彼ら (マツゲカヤラン、タネガシマシコウラン、ヒメクリソラン (?)) に会いに行こうと考えています。ご希望の方は一緒にいかがですか?


幻のランを求めて タネガシマシコウラン編

幻のランを求めて ヒメクリソラン編

コラム筆者:山本裕之

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