麗しの伊勢 文:小川豊明

麗しの 伊勢(イセ)との出会い 1978年

中学生だった頃、冬の楽しみは各地の園芸店が出すカタログショッピング。 ○○園芸店は、産地別セッコクが充実。△△園は価格が良心的。××園芸は珍品揃いなどそれはそれは、見ているだけで楽しい物でした。お年玉の使い方もかなり変則的で、ラン科植物を中心にフウラン2本、カゴメラン2本、セッコク和歌山産2株、ジガバチソウ2本、・・・。などとランの図鑑を見て、かわいいなと思う物を片っ端から求めていました。 当時「日本のラン」という本は私のバイブルで、この本に載っている物はすべて集めたい位の勢いでした。栽培技術はと言うと、せいぜい地生ランと着生ランの区別があるくらいで、温度管理や陽の採り方などは超素人で、花が咲く前に枯らしてしまう物も多くありました。そんな中で、各地より集めたセッコクはたくましく育ってくれました。とは言っても花はごく普通の物ばかりで、うす桃色の花でも咲こう物ならとても大切にしていました。 当時、紅花のセッコク万里紅など 矢1本が5000円 一株では少なくとも2~3本立ちなので、10000円以上は出さないと手に入らなかった物でした。 そんな中、近くのホームセンターの園芸コーナーに、山取のシノブ玉に風鈴を下げたものが売られていました、その中になんと小さなセッコクが着いた風鈴を見つけラッキーとばかりに買い求めました。そして6月になりふと見ると風鈴玉のセッコクに白い可憐な花が咲きました、よく見ると花の中心に深紅の目玉が有るではありませんか。

麗しの花

図鑑で調べてみると、セッコクとキバナノセッコクの交配種 イセ によく似ていました、シノブ玉に着いて売られていた物なので産地はもとより、自然交雑か人工交配のものなのかもわかりませんが、とてもきれいな麗しの花でした。 大学に入り、この花を交配し自家受粉させるとズバリ!セッコクとキバナノセッコクと思われるものが約半々、メンデルの法則のようには行きませんが、この株が イセで有ることがわかりました。そして、あえて高知産のキバナノセッコクにセッコクを交配し、無菌播種を行ってみたところ、1994年5月白地に深紅から桃色地に深紅の花を咲かせるイセの大量増殖に成功しました。特徴としては、この交配の場合矢の長さ25cm程、茎細め、花期はセッコクより1ヶ月ほど遅く6月下旬、花芽1つから3~4花を咲かせ、キバナノセッコクに似ている。寒さにも強く、私もすむ千葉では、セッコクと同じく屋外で越冬する。夏季もよしず越しの日よけで十分生育している。私にとって本当に麗しの花となりました。

イセ
イセ
イセ
イセ
イセ
イセ

バラエティー イセ

セッコク:Dendrobium moniliforme

キバナノセッコク:Dendrobium tosaense

イセ:Den moniliforme × Den tosaense


コラム筆者:小川豊明

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