私のハブ捕りものがたり [4]

私たちは徳之島を後に奄美大島へ

島で自由に行動するため、行きに名瀬の港に停めておいたみどりのキャラバンに乗り込み向かったのはまだ豊かな自然が残る宇検村。今回もキノエササランを探しとことん歩くがそう簡単には見つかるわけがない。そもそも本当に奄美大島で採取されたかどうかも確かではないのだから…。

数日後、私たちは場所を変えスダジイの大木が多くあり着生ランがたくさん自生する住用村の照葉樹林へ移動し山中へ分け入る。斜面の上の方で明るいためか? 細い木々には、地面に近い (地上50cm程度) ところでもシコウランが見られました。そこからかなり下った場所で斜面からななめに伸びるスダジイの大木に着生するクスクスランの写真を撮ろうとしていると少し離れたところをガサガサと音をたてて歩く2人に驚いたのか? 私のいる樹の下を真黄色のハブが擦り抜けるように足早に慌てて逃げていくのが見えました。「ハブだ!」私はそう叫ぶのと同時に木から飛び降り近くに置いてあった自分の用心棒を使いそいつの首根っこを押さえこみました。このハブはまだ若いらしく体長100cmを少し超えたくらいの黄色い体をしたとても元気のいいハブでした。いつものように木の枝をかませ、ある程度毒をしぼりだした後、袋に入れ用心棒の先につるして車に持ち帰りました。その後も数日間このあたりの山中を散策した後、東京行きのフェリーに乗り、下船するとそのまま学校へと向かいました。

182センチの大ハブと、元気のいい約1mの金ハブ (東京農大校内で撮影)

折しもその日は入学式か? 学校の中庭には大勢の学生たちの姿がありました。今になって思うとあのときの私たちは若かったとはいえかなり危ないことをやらかしたと反省しています。それというのも生け捕りにしたハブを持ち帰り袋から出して大学の中庭に放しみんなでいじりまわした後、瓶に押し込み近くで買った焼酎でハブ酒を造ったのです。今、考えると若かったとはいうものの一歩間違えば重大な事件になったかもしれません。幸いにも何も起こらず私の40日間にも及ぶ長い卒業旅行は終了しました。ラン探しの長旅の最中で卒業式にも出席しなかった私の卒業証書は友人の相川くんが受け取り、後に私の自宅まで届けてくれました。

私のハブ捕りものがたり [5]


コラム筆者: 山本裕之

「野生のランに魅せられて」へ戻る

「自然人のコラム」へ戻る

ホームへ戻る