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ひょうたん島探訪 (八丈島のラン) 1984年~1986年 文:小川豊明

大学1年もまもなく終わる2月から1ヶ月間、農業実習のため伊豆諸島の園芸農家「日の出花壇」「大興園」という2農家にご厄介になりました。実習では食虫植物・山野草・フェニックス・観葉植物・切り葉などを生産する傍らで、ランを栽培し、通信販売を行っていました。平日は農家での園芸実習、しかし土日となれば別。トラックを借りてあちこちの山に出かけていきました。

島はちょうど瓢箪の形の島で、NHKのひょっこりひょうたん島のモデルになった島とも言われています。島はくびれた部分が町の中心部で、南と、北側と二つの火山があります。

船上より望むひょうたん島

南山編

実習で訪れた地区は、島の南部の麓の集落です。農家の裏手には滝があり、頂上方面に山道 (歩く道) があります。集落からしばらくはロベやフリージアの畑があり、トラックの登れる農道もありますが、最上部にある牛舎からは自前の足と言う事になります。

山道に入るとすぐにシュスラン・ハチジョウシュスラン・ミヤマウズラ・オオシマシュスラン・アケボノシュスランがたくさん見られ、好きな模様を選ぶ事が出来ます。山道を上がっていくと右側が深い谷になっていて、その中に谷川が流れています。木々は比較的大きくなく、風の強い事がうかがえます。

さらに登っていくと祠のある少し開けたところに出ます。日の当たるようなところにはハチジョウチドリがまとまって見られ、林床にはエビネがちらほらありました。250mほど登ると山越えの林道に出ます。

ひなたの道ばたにはハチジョウツレサギが点々と見られ、3月のある日、花茎を伸ばしている株もありました。地元の方にハチジョウネッタイラン・ガンゼキランの自生地を教えてもらい、その場所を探しながらの山歩きです。山の頂上にはロラン局 (漁業無線基地) が有るので、道があります、その道に沿って行くとカルデラに出ます。

カルデラの中をさまようこと2時間、枯れた大きなシイの木の下で用を足していると、前方5m程の所に大きな長い葉が……ガンゼキランを見つけました。このラン自体は屋久島で何度も見た事がありましたが、東京都で見る事ができるとは!だからとても嬉しかったことを覚えています。

数年花を付けていないらしく、バルブは小さく弱々しい物でしたが、ガンゼキランでした。その後ネッタイランを探し回りましたが、発見できず、山の中で心細くなり下山。

カゲロウラン?

ハチジョウシュスラン

南部集落編 春

ここは島の最南端。ぽつんと灯台があります。ここまではバスの便があり車がなくてもいけます。しかし一日数本ですが…! 大きな崖の下に漁港がありその先に温泉のある風光明媚な所でもあります。

ここにハチジョウツレサギがたくさん咲く場所が有ると聞き訪ねました。そこは海から切り立った崖に囲まれた、小さな半島状の場所で2m程のシノダケの下にありました。一見してランの生育する場所ではない感じの所で、水も少なくなぜ? こんな所に? と思いました。

シノダケの下は比較的明るく、風もなくランの葉は、のびのびとしており、太い茎にたくさんのつぼみを付けていました。葉は2枚つぼみは25位の物が多かったです。末吉バス停近くには切り通しが多数あり、イズノシマダイモンジソウやシマホタルブクロに混じってハチジョウチドリがたくさん自生していました。またやたらに開花時期の早いネジバナが道ばたにあり、楽しませてくれました。

集落を後に、反時計回りに進むと、この先20km程集落のない周回道路になります。この道沿いでは、車窓からエビネの葉がわかるほど密度の濃い地域がありましたが、ジエビネばかりでした。しかし森の様子は何か在りそうな予感のする場所でした。

エビネ?

ハチジョウツレサギ

林道編 夏

坂下の中心地より南の山方向に島唯一の発電所があり、そこから林道が山の上へと続いています。川沿いに進むと大きな木々がお出迎え、その下には大きく育ったナギランがありました。

かなり暗い山ですが、その数の多い事、花の時期はさぞかしきれいな事でしょう。周辺にはシュスランの仲間があり楽しい谷で、ヘゴシダが自生する最北端と言う事になっていました。

車は荒れた山道を進んでいきます。水温計も上がっていきます、明るい場所で一休みすると、カキランの大きな株であちこちにありました。切り通しにはモウセンゴケが一面に生えていてその中にヒメジガバチソウ? がありました。

ここでハプニング、ひょいと乗った道ばたの岩の下に蜂の巣があり、ブーン!! となりました。3カ所も刺されて帰還となりました。痛かったのなんの?

ナギラン

シマササバラン

ナツエビネ

北の山 夏編

実習の合間に北の山に登りました。この山は空港裏手にある円錐形、ようするに富士山状の火山です。標高854m。空港裏の麓は一面ハチジョウススキとサカキの生える原っぱで、ぽつりぽつりハチジョウツレサギがあります。

そして100m程登るとシダの切り葉生産のネットのある畑やフェニックス畑、その上には山を一周するように鉄条網が張ってあり、道には鉄のゲートがあります。傍らには「クラクションを鳴らさないで下さい・ゲートは必ず閉めて」の看板。どうやら牛を放し飼いにしてあるようで、クラクションは給餌の合図らしいです。

このゲートから先は原生林があり、シマササバラン・コクランがたくさんありました。7合目位からは浅い山の中、大きな岩陰にエビネ・キリシマエビネがあり、きっとヒゼンも有るのだろうなと思いつつ上を目指します。約8合目程の所には環状道路とトイレがありそこからは狭い登山道に、3歩登っては2歩下がってしまうような火山特有の登りになります。木の高さは3m程、そこら中に牛の歩いた、けものみちが有ります。

そんな中にありました。ギボウシランです、花は終わっていましたがギボウシを小さくしたような、つやつやの葉を2枚つけたかわいいランです。牛糞堆肥のおかげでしょうか、かたまってたくさん見る事ができました。

そしてふと見上げると、この島には珍しいセッコクがありました。以前はたくさん見られたようですが、最近のブームでずいぶん減ったようです。花物のセッコク、「右近丸」はこの島産と言う事になっています。

大汗流して頂上へ、ここは別世界ススキが風になびきとても涼しい所です。噴火口が大きく口を開けていて、切り立った崖で、底までの深さは200mとか聞きました。中も原生林がありましたが、ひとたび足を踏み入れたら這い上がれないような感じの場所です。

ギボウシラン

東京都産 ヒゼンの画像

象皮病疑惑事件 編

大学3年の夏のこと、3回目になる実習。もう島の何処へでも行けるようになっていました。地域の青年団の野球大会や、亀噛め祭り (かめかめまつり) などの島の行事にも参加させてもらえるようになっていました。

そんな時、島の漁師さんに「小島に行くがいってみるか?」と誘われました。無人島になっている島に渡る事は、チャーター船にでも乗らなくてはなかなか行けない所です。小島とはいえ、かなり大きな島でランがある事は間違えないと思いました。

翌日、早速漁船に乗り小島に、昔小さな港があったと思われる岩礁から上陸。4時間だけという約束で私は頂上を目指しました。ところがどっこい! 35年ほど人が住んでいない島です、人が通れるような道はありません。

そして大藪・ススキ地獄・背の低いサカキ・サルトリイバラ……。50m進むのに1時間ほどかかります。そして時折ある動物が! 大量のヤギが繁殖していて、藪の下を歩き回っていました。

山の上部大きな木々があるところまで行けるのならば、ある程度目指す物はあるのでしょうが、あまりにも過酷な条件での散策でしたので、ランそのものには出会えませんでした。海岸に近いところには昔人のいた形跡がありましたが、本当の無人島です。水も地図もありません。時間まで頑張ってみましたが、収穫なし。のぼせっぱなしの一日でした。

翌日からはまた農業実習の日々が続きましたが、何かからだが怠いような気がします、それが日に日に強くなって、立ち上がろうとすると、足に血が下がるような? ふくらはぎに血が溜まるような? 違和感あり。

とうとう起きられなくなってしまい研修先の主人に相談したところ、「暫くぶりに聞いたぞ、その症状! そりゃ急性の象皮病かもしれない」と脅かされ、しぶしぶ診療所へ、先生からは「いつからか? 何処で何をした? 何をさわったか? 岩の上で寝転がったか……?」などを聞かれ、「10日ほど前小島に行った。毎週山に行っている」と告げると私はパンツ一丁にさせられました、くまなく見て回ったところ、脇の下に5mm位のおできがあり脇の下と股のリンパ腺が腫れていました。

そうです、ツツガムシ病と診断され、点滴と注射それに隔離入院までに至るゴールデンセットという事になりました。町の新聞「南海タイムス」にも“農大生御難”の記事が載ってしまい、実習先の農家に迷惑をかけてしまいました。

私が発症する半月前にも名古屋から来た観光客が、自宅に帰ってからツツガムシ病を発症したとの事でした。またお婆さんから聞いた物ではこの島には昔から象足病という風土病があり、足が太くなってしまう人がけっこういると言われ、当時、村の郵便局の人もそうだ! といっていました。

私も足が重いと言ったところ、検査をしなければ分からないが、一応それにも対応した薬を点滴しているとの事でした。ミイラ取りがミイラになりそうになったお話です。

ヤギの住む。小島


イラスト:M.Tajima

コラム筆者:小川豊明

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