はじめに

自然の中で植物を探すことが好きだった私は、小学生のころには食虫植物や野生ランを見つけるため電車を乗り継ぎ、あちらこちらを飛び回っていました。

高校の頃からは、特に日本の野生ランに夢中になり、伊豆七島・小笠原諸島・大隅諸島・奄美・沖縄・八重山などの南の島々を中心に、30才になる頃まで長年にわたり歩き回りました。

時には増水した激流に流されたり、突然ハブに飛びつかれたり、スズメバチの襲撃にあったり、崖を転げ落ちたり、更にはツツガムシ病や疑似赤痢で入院するなど、危険な目にたくさん遭ったものです。

当時の私を知る仲間たちからは、「お前が今生きているのが不思議だよ」と言われるほどです。

奄美大島のジャングルにて

このように人がほとんど行かない大自然の中を野生ランを探し歩き回ることで、ランだけではなく、そこに生きる他の動植物、あるいは大自然の絶景など、自然がおりなす様々な事柄もたくさん目にすることができました。植物についての知識のみではなく、視野を広げ物事を多方面から見るということも、自然に教えてもらったと感謝しています。

残念ながら、今日では日本中の自然林の多くは伐採され姿を消してしまいました。更に人による採取や温暖化などの気候変動による環境の悪化、山林の荒廃など様々な理由で、自然の中に自生するランたちも極度に減少してしまいました。

このような状況の中で、まだ日本の野山に豊富に野生ランが自生していた頃を知る人も少なくなり、私の知る範囲では (特に希少種に関して)、自生の様子や種の特徴など、真実が正しく伝わっていないことも多くあります。

学生時代 奄美大島にて

私も最近まで自分の育種の仕事が忙しく、日本の野生ランからはしばらくの間離れていました。しかし長年に渡り日本の野生ランの自生を見続けてきた者のひとりとして、当時の状況など正しく伝えなければならないとの思いに至りました。これから過去の記憶をたどり、少しずつ当時見てきたことについて出来るだけ正確に記すことにします。

私の経験が、研究者や自然を愛する多くの人たちの手助けになれば幸いです。
今後、当時ともに行動した仲間たちもいろいろと記してくれる予定ですのでお楽しみに。


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