本当にあった怖い話 [4] 7人の坊さん 文:小川豊明

八丈島 1985年8月

大学3年の頃、6人の仲間達と共に行き慣れた八丈島、中ノ郷にカキランを見に行った時のこと、実習でお世話になった「日の出花壇」を見学させていただき、食虫植物を見て回り新たに興味を示す者もいたと思います。その夜は日の出花壇のご主人菊池義郎さんのご厚意で、風呂を頂きました。農場の裏山にテントを張り、キャンプとなりました。大海原のまっただ中にある八丈島とはいえ、夏の八丈は蒸し暑く、みんなアツイアツイを連発していました。しかし疲れからいつしか寝てしまいました。が!誰かが突然「ワアー」っと大声を上げたので全員起きてしまいました。そしてテントの中の数人が頭を誰かになでられたと言い、がたがたと震えていました。しばらくすると声に気づいたご主人がライトを点けて来てくれました。「今夜は家に来なさい、盆だから・・・」と言う謎めいたことを言った事がとても気になりました。家の中では奥さんが冷たいお茶を出してくれ、何があったのかを聞いてくれたので、「数人が頭を触られた・・・?」というと、暫くしてご主人が「中ノ郷には昔から七人の坊さんという話が伝わっていて、お盆の時期の晩に外を歩いていると坊さんが何処からか現れて、出会った人に災いを起こす・・・。」という物でした。それは昔、八丈に七人の坊さんが流刑になった時、島は大変な飢饉で島の住民でさえ食料が無く、とても七人もの流刑者を受け入れることができず、坊さん達は中ノ郷集落の外れの岬で命を落としたとのことでした。それから毎年盆になると七人の坊さんが集落に現れ、人々に災いをおこし、七人連れは危ない・・・と言う話でした。「君たちは山でキャンプをしていたので、きっと坊さんが来て人数を数えていたんだと言われ、とても怖かったことがありました。 当然、次の日は坊さんの来そうもない別のキャンプ場に行き、夏の八丈を楽しんだことは言うまでもありません。八丈富士で数々のランを写真に納め、大自然を満喫しました。 先日、東京農大の収穫祭(文化祭)で昔の仲間達に会う機会がありました。そこでそれまですっかり忘れていた八丈島でのこの事件を話す者がいて、皆思い出した「坊さん事件」に花が咲きました。もう今から30年以上前の出来事です。

三原山をバックに
三原山をバックに
高さ10メートルになる北限のヘゴシダ
高さ10メートルになる北限のヘゴシダ

コラム筆者:小川豊明

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