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ハチャメチャ・ラン日記 文:小川豊明

今から30数年前、山本さん(現蘭裕園社長)と後輩の菊山君と私の3人で大隅半島に、ヘツカランを見に行った時の事。

川崎で新車のベンツと接触事故を起こしたポンコツ号、さい先の良いスタートを切り鹿児島県大隅半島へ出発です。 大隅半島の山の中では、ナゴラン、大きな株立ちのセッコク、ヘツカランを見つけ、木にへばりついての撮影行。 楽しい散策でした。 しばらくして、菊山君が山の中を散策中、おなかに出来た デキモノを山本さんに見せ、痒いんですよ言うなりと、「以前ツツガムシにやられた時の物とよく似ている」と、脅かし半分のツツガムシ宣告。 居ても立ってもいられなくなった菊山君は、絶対に休めない授業があるとか言って先に東京へ帰る事になりました。

翌日早朝、菊山君を大隅半島の国鉄大隅線大隅高山(おおすみこうやま)、駅へ送り届けた帰り道、再び志布志湾を左に見ながら内之浦ロケット試射場基地の前を通り、数km進んだところで、「たしかこのあたりの細い道沿いに、ヘツカランとナゴランがたくさん生える場所があったはず」と言いだしました」。 ようし、そこへ行ってみようと言う事になりました。 そこは最近道が整備されて、以前来た時とはだいぶ違っているようで、迷っているようでしたが、とりあえず大通りから下方へと降りる細道を見つけて下っていきました。 その道はちょうど軽トラックがやっとで通れるぐらいの細さで、片側を切り立った斜面、反対側は急傾斜の谷で、さらに急なデコボコ道でしたが、私たちは何のためらいもなくその曲がりくねった細道をくねくねと下へ下へ進んでいきました。

坂道を一番下まで下りきった時にはじめて、私たちはとんでもない道を下ってしまったことに気が付きました。 それというのも大通りから300mぐらいにわたり車を転回出来るような場所が一か所もなく、突き当たりの正面はしばらくの間使われていない、水が浸みった、ぐちゃぐちゃの荒れた田んぼのような場所であり、車をまわすどころの騒ぎではなかったのです。 つまりここは耕運機のための道だったのです。 今下ってきた悪路をバックで登るなんて無理だろうと思いながらも、他には帰る方法がありません。 窓から身を大きく乗り出して、後ろを誘導しながら根性でバック。 それでもなんとか半分以上は戻ることが出来たのですが、最後の100mがなかなか難関です。 何回も前進、バック、前進、バック…を繰り返し、車を揺すって勢いをつけたり、荷台でピョンピョン跳ねたりしながら残り5・60mのところまでなんとか上ってきました。 しかしそこは砂利もない土の道、ザザザーという音もなく、粘土質の地面と半分山のすり減ったタイヤのこすれる、にゅるにゅると言う音ばかりでした。 何とかして脱出したくて、木の枝を突っ込んでみますが車は動きません。 途方に暮れた二人でしたが思いつきました。まだ出来たばかりの大通りの溝にはまっているグレーチング(鉄製のどぶのふた)が目につきました。 それを外してきてタイヤの下に敷き、50cm、1mずつバックしながら、なんとかあと30mまで来ましたが、最後の試練、土手から斜めに生えるスギの木がどうしてもかわせず、そこからどうにもなりません。 その時、こちらへ向かってくる車の音が聞こえてきました。 ちょうどよいタイミングで軽トラックに乗った農家のおばちゃんが通りかかったのです。 私たち二人は必至で道路に立ちはだかり手を振って止まってもらい、この車を借りてロープで引っ張り上げるという作戦にでました。 「お前下の車に乗れ。なんとかうまくハンドルを回してこの木をかわせ。」そういうと山本さんはおばちゃんの軽トラックに乗り、坂道をバックでポンコツ号の近くまで降りていき、ながーいながーいロープを何十にもくくりつけ、何度も何度もタイヤを滑らせながら、なんとか根元が曲がった木をかわし、やっとの思いで私たちは大通りまで上がってくることが出来ました。

内之浦のおばちゃん、ありがとう。

おばちゃんは「こんな道、だあれも行かないよ、落っこちたら死んじゃうよお」。と言い残し去っていきました。その後二人は重い重いグレーチングをまた元あった溝に戻し、次の山を目指すことになりました。本当は「せっかく出られたんだから帰ろうよ」と心の中で叫んでいました。山本さんには届かなかったようで、次の日もまた次の日もランを探して山道を行きました。そして、家路についたのはそれから5日後の事でした。 たくさんの写真が撮れ、楽しい山の日々でしたが私は思いました。 山本さんに「ちょっと行かない?」と言われた時は要注意。 何をしに? 何処へ? どの位の期間行くか?をよ~く確かめないとトンでもない事になるというお話です。山本さんと懐かしい思い出話をしながら、書きました。


イラスト:M.Tajima

コラム筆者:小川豊明

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