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サバイバル日記 西表島編 [2]

探検隊員 桜井・関・山本

1985年3月13日朝、私たちは小雨の中仲間川沿いにある展望台の広場に張ったテントを出て、ジャングルの中を通り分水嶺から一時間くらい先の小高いところにある窪地を目指し歩き出しました。 そこは以前私が交雑新種のスミレ(未だに名前も聞いていない)を発見した場所で、その他にもマツダヒメランやジュエルオーキッドと呼ばれるビロードの綺麗な葉をもつキバナシュスランがたくさん自生する場所でもあります。

コウトウシラン
コウトウシラン (1)

コウトウシラン
コウトウシラン (2)

林道終点の広場から土手を上りジャングルに分けいり小高い尾根をいくつか越えていくと、浦内川へと水を集める支流があります。普段は、この川の水量は少なく流れも緩やかで、以前来た時は浅い川の中を何時間も歩いて行けたくらいです。 しかしこの日は小雨が降り、いつもとはだいぶ違っていました。 多少無理だとはわかっていましたが同行した隊員の日程上の都合もあり雨で水かさのました川を縫うようにして何度も渡り、縦走道中程にある目的地をめざしひたすら歩き続けました。 頭上高くの横たわるように伸びる枝にリュウキュウセッコクがびっしりと着生している下を通り抜け、そこから少し下流へ来たところでゴォーゴォーと音を立てて流れる荒れた濁流に行く手を阻まれ、先に進むことが出来なくなりました。 仕方なくベースキャンプに戻るため今来た道を引き返し始めたのですが、先ほど渡った川もすでにかなり水量が増していて、左側はガケ、右は急流、そして前方には荒れ狂う濁流と、ジャングルの中のわずかな平地に取り残されて前にも後ろにも進めなくなってしまいました。

仕方なく、ためしに片足を川の中に入れた瞬間、体ごとすくい取られ私の体はそのまま激流に流されてしまったのです。直後、私の体は激流にもまれるように2、3回転。その時の様子を一部始終見ていた関ちゃんの口から発せられた大きな恐怖の叫び声が、激流を流される私からもはっきりと聞こえました。

10メートルくらい下流へ押し流されたところで奇跡的にも川岸にある大きな岩にかじりつくことができ、その上にあがった瞬間「あ~助かった」と大きく実感させられました。その間、わずか5~10秒?の出来事でしたが、私にとっては恐ろしいほど長く感じ、未だに忘れることが出来ません。もしもあの時流されていたのであれば、何日か後にカンピラの滝のあたりで土左衛門となって発見され、ニュースになっていた事でしょう。

実はこの時の私達には無理をしてでもテントに戻りたい事情があったのです。 実は、朝出かける時日帰りと決めていたため、小さなリュックサックの中にはカメラとロープだけ。食料を全く持っていなかったのです。 このままここで一晩を過ごすのは辛すぎる。周囲を見回しているうちに川の左岸と右岸から立ち上がる樹の枝が高いところで交差しているのが見えました。テントのある向う側に行くには私側から木に登り交差する枝を伝って向う岸に行くしかないと考え、すぐに実行にうつしました。 はるか下方に流れる激流の上で、命がけの綱渡りです。樹の枝をミシミシと大きくしならせながらもなんとか対岸に渡りきり、向う岸で待つ2人の所までロープを渡して、無事3人とも生還することが出来ました。

バイケイラン
バイケイラン

こうして土砂降りの雨の中、全身ずぶ濡れになりながらやっとでベースキャンプへ戻ることが出来たのですが、翌日、同行した2人とももう帰りたいと言うのです。何とか引き止めようと思ったのですが、そのうち一人は「もうついていけません」という言葉を残し、予定を繰り上げて本当に先に帰ってしまいました。

この一件以降、私と南の島を旅してくれる人はかなり少なくなってしまった事は言うまでもありません。残された関ちゃんと私は次の日、島の最高峰 古見岳へと向かうことにしました。

恐怖!密林のイルミネーション (サバイバル日記 西表島編 [3]) につづく


コラム筆者:山本裕之

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