ウチョウラン病害虫の防除

条件の良い場所で適切な管理をし、体力のある丈夫な株に育てれば病害虫による被害は少なくて済むのが普通です。また発生した場合でも、その原因を的確に特定し、初期に適切に対処することができれば被害の程度も最小限で済みます。

病害虫による被害は単独ではなく別の事柄が原因で二次的におこる場合も良くあります。例えば暑さや水のやりすぎで根を傷めてしまい、葉先が枯れ込む。その後、その部分に灰色かび病の発生やナメクジの食害が加わる。また前年の暑さのために良い球根ができず株に体力がなく抵抗力が低下したために多くの病気が発生することが良くあります。

このように二次的な要因で起こる場合は被害も大きくなります。近年は夏期の異常な高温や日照不足など気象の変化にともない発生する病害虫の種類や時期も今までとはかなり違ってきています。さらに突風や暴雨など、気象の変化が急速に起こる事が良くあり、これらが原因で病害虫以外による障害も多くみられ、より複雑になり原因を特定する事が極めて難しくなっています。参考書なども詳しく書かれているものが無く、個人での判断が難しいため専門家に聞いてみるのも一つの方法です。

それでは、都市部周辺で近年多く発生している病害虫について解説していきます。

害虫の防除

ウチョウラン害虫
ウチョウラン害虫

ナニセノメイガ

ナニセノメイガ
ナニセノメイガ

蛾の幼虫で高温時に多く発生する食欲旺盛なイモムシ。
蛾の幼虫、大きさは2cm~3cm、5~8月頃に多く発生します。
多くは銀白色に多数の黒色斑点があり、同時に短毛も有する。食欲は旺盛で花や葉を短時間のうちに食い荒らします。
近年、気候の変化と共に、多く見られるようになりました。発見しだい、取り除くか、殺虫剤を散布します。

ハモグリバエ

ハモグリバエ
ハモグリバエ

開花直後の花茎や葉の内部を小さなウジ虫が食害するため、開花直後の花茎が折られたり、蕾が褐色し枯れることも多い。サツマチドリなど茎が太く、葉肉が厚い種類に多く発生する。
幼虫が茎葉内部を移動しながら食い荒らします。
花茎部分の食害では、気づいたときには既に手遅れの場合が多く、蕾は褐色になり、花が咲かないことがほとんどです。
下部へ移動すると、株へのダメージが大きくなるため、幼虫が潜む葉や、花茎部分をとりのぞき、侵入をくいとめます。
サツマチドリなど茎が太く、葉肉が厚い種類に多く発生します。強風時を除き、蚊取り線香を焚くことも有効です。

ヨウトウムシ

ヨウトウムシ
ヨウトウムシ

主に夜間に行動するイモムシ。大きさは2~4cm。
地上から離れた棚上での栽培では、ほとんど見られませんが、盆栽棚など地面に近い場所での栽培ではまれに食害にあうことがあります。
葉に食跡がありフンがあるにもかかわらず、害虫が見当たらない時はヨウトウムシの可能性があります。
ヨウトウムシは夜間に行動するためです。食跡付近を探し、発見すだいすみやかに取り除きます。

ハマキムシ

ハマキムシ
ハマキムシ

蛾の幼虫で、危険を感じるとすばやくうごく小さなイモムシ。葉の食跡と糸で綴って巻かれた葉が特徴である。
成長した幼虫は、葉をまるめるように糸でつづり、内側から食害をつづけ、やがて蛹をつくり小さな蛾へと成長します。
食害にあった葉はボロボロになり、褐色に枯れるため、新球の生育は極度に悪くなります。
そのままにしておくと比較的早く成虫になり、繰り返し発生し、被害が拡大するため、見つけ次第取り除きます。
多く発生した場合には殺虫剤を散布します。

アザミウマ

アザミウマ
アザミウマ

1~2mm程度の細長く、小さな虫。高温期 (6~9月) に多く発生。成長した葉の裏側や花が、かすれたように白くなる。
発生初期は、花や葉に小さなかすれたような小斑点を生じ、被害が進むと、全体が白っぽくなり、緑色をなくし、やがて株全体が褐色となり、衰弱します。
葉が白っぽくかすれる等の症状から、ハダニによる被害と誤認されることも多くあります。
私のところでは、過去におきた葉のかすれのほとんどがハダニではなくアザミウマによるものでした。
小さい為、かなり目の良い方でなければ見つけることが難しく、発見が遅れてしまうと、多くの株に被害を与えるので注意します。

病気の防除

ウチョウラン病気
ウチョウラン病気

ウイルス病

ウイルス病
ウイルス病

通常ウチョウラン類では大量にウイルスに感染することはほとんどありません。
症状は、葉が素直に展開せず、いじけ、茎葉にはねじれや凹凸が生じ、花や葉には不規則な斑点があらわれ、症状が進むと株全体がいじけ、花も奇形になることがあります。
人の手による作業や昆虫の吸汁により、感染が拡大します。
近親交配による、遺伝的な障害とよく似ているため、区別はつきにくくなります。
発生した場合は他への感染を防ぐため、鉢ごと処分するのが良いでしょう。

灰色かび病(花、葉、株元)

灰色かび病(花、葉、株元)
灰色かび病(花、葉、株元)
  1. 根本(地ぎわ)からたおれる。
  2. 開花中の花に淡褐色・黒色の斑点を生じる。(まれに赤色)
  3. 花(花柄)や、傷んだ葉先、ハカマなどの枯れてまもない部分にカビを生じる。

など、多くの症状が現れます。特にハカマ部分に発生すると、根本からばったり倒れることがよくあり、こうなるとほとんど助かりません。
軟腐病と誤認されている場合もありますが、私の経験では灰色かび病菌(ボトリチス)によるものがほとんどです。
中・低温期に、他の植物と混みあった栽培すると、多く発生します。
風通しを良くし、湿度を低く保つことで被害は少なくてすみます。
また、ハカマが褐色に枯れる以前に2回程度の地ぎわにもかかるように灰色かび病に効く殺菌剤を散布すると発生はほとんどなくなります。
通常、立ち枯れ病や、軟腐病とは使用する農薬が異なります。

輪紋病(アルタナリア)

輪紋病(アルタナリア)
輪紋病(アルタナリア)

高温期に多く発生。葉に褐色の小斑点を生じた後に、葉全体が枯れる。
開花中の花穂に生じると、全体が褐色に枯れることもあります。
特にサツマチドリやクロカミランに多く発生し、ウチョウラン、アワチドリ等では、発生が少なくなりますが、白紫点花あるいは、点々の多い個体に多く発生する傾向があります。
進行が早いため、発生した時は早めに殺菌剤を散布します。
多くは野菜、果樹、稲などの病気の為、周囲に田畑や果樹園等がある場合は開花前に殺菌剤を2・3回散布し、予防に努めます。

病虫害以外の障害

高温障害

異常な高温でおきた葉先の枯れ込み。

葉焼け

梅雨があけ、強光が直接あたった為に起こった葉焼けの症状。

やけどにより起こる立ち枯れ

急激な高温と強風による乾燥で株元におきたやけど。

薬害

不適切な薬剤の使用により現れた葉枯れの症状。


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