ウチョウランの自生地から学ぶ

ウチョウランの自生の様子(群馬県)

ウチョウランの自生地

ウチョウランの仲間は自生地の環境や自生の様子など人により様々に伝えられ、参考書により相反する見解が示されていることも多く、自生地を見た事のない方にとっては何が本当なのかがわかりません。自生の姿を正確に知る事ができれば栽培の参考になり、適切な管理を可能にして上手に育てる事もできます。

うまく育っている方は今まで通りの栽培を続けるのが一番良く、栽培方法を変える必要はありません。もしうまく育てられない場合、その原因を特定しなければ今後も上手に育てる事はできないでしょう。

アワチドリの自生の様子(千葉県)

それでは私が過去に日本のあちこちで見てきた、たくさんの自生地、アワチドリ・ウチョウラン・サツマチドリなどの様子を感じたままに記します。今後の栽培の参考になれば幸いです。かなりのボリュームがあり、すべてを記すには多くの日数がかかりますので徐々に書いていきます。

※ウチョウランの種類について詳しく解説していますのでこちらもご覧ください → ウチョウランの種類

ウチョウランの仲間、自生の姿

ウチョウランの仲間は東西南北どちらに面した場所でも自生しています。自生地では日の向きがどうのというよりも、まわりの環境やその他の条件により草姿を変えてその場所に適応した形となって生育しています。

通常は明るい斜面に、コケ類や数種の草などとともに自生することが多く、日が強く当たり乾燥する岩場などではコンパクトにしまった感じの普通花 (淡紫紅花) のみが多く見られました。逆に水分が多くコケむした斜面では大きく生長し、さまざまな変異個体も見られました。また白花や斑入り等の変わり花 (人が好むような個体) の多くは水分が多めで、時として水がしたたるような穏やかな場所で数多く見つかり、日当りが良く乾燥する場所ではまったく見ることができませんでした。

サツマチドリの自生の様子(鹿児島県)

急斜面の岩場などでは斜上して生育することが多く、斜面の最上部やガケの途中にある、棚場などの平坦な場所では、まっすぐに立ち上がり自生する様子も見られました。また他の草とともに生え、根元に日が当たらないところでは、やや伸長ぎみになり、しなやかに下垂して自生していることもあります。このように自生地では、周囲の環境や条件により直立、斜上、下垂など、さまざまな形で自生しています。

また一本に2~3個の球根を地中にもつと書かれているのを目にすることもありますが、通常、自生地では1個の球根からひとつの芽が出て生育にともなって新しい球根が徐々に生長していくというのが普通で、時期によりひとつ、新球形成後ではふたつの球根が並びます。まれに条件の良い場所では1個が2個に増えることがあり年数が経過することで株立ちになることもあります。栽培すると個体により差がありますが、1個が2~3個に増殖することが普通です。

人工的な環境を利用するウチョウラン

ウチョウランの仲間は面白い事に人間の開発により造られた斜面などを上手く利用して生活することもよくあります。例えば道路やダム工事などで新しく作られたのり面や、かつての石切場 (採石場) 等、人の手が加わりできた場所でたくさんの自生が見られることもあります。その様子は造成地で短期間に繁殖するネジ花の姿にも似ています。

ちなみに私が観察を続けてきた自生地でも林道工事により造られたのり面にその後多くのウチョウランの姿を発見した場所が何カ所もあります。故鈴木吉五郎氏がアワチドリは昭和30年代に千葉県清澄山付近を散策中に道路わきの人工的に削られた斜面 (のり面) で発見したと話してくれたことを覚えています。


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