アワチドリの自生地

アワチドリの自生の様子

自然界でのアワチドリ

アワチドリ (ウチョウランの仲間) は、川沿いの急斜面や山腹に露出する岩場などに自生していました。やや長いスパン (10~20年) で自生地の観察を続けると、地滑りやガケ崩れなどがたびたび起こり、木々とともに表土が流されるなどで、一時的 (数十年間程) に日当りの良い急斜面が形成されることがよくあります。しばらくするとコケや草などが生え、アワチドリにとって明るくて生活しやすい場所となります。このようにして自然界で偶然にできる条件のよい場所において、比較的短い期間に繁殖していると考えられます。

![アワチドリの自生地 (Ponerorchis) - Ranyuen](/assets/images/AWACHIDORI_habitat_NOKOGIRI-YAMA_1_ja.jpg)
かつて沢山のアワチドリが自生していた絶壁

しかしこのような場所は環境の変化も著しく不安定で、彼らにとって住みやすい条件が長く続くことはほとんどありません。明るくて住み心地の良かった場所も丈の高い草が生え、上方には木々が茂り、やがて暗い日陰へと変化していきます。多くの個体は環境の変化に順応できず消滅してしまうと考えられます。このことは比較的新しくできた斜面で群生していることが多く反対に古くからの斜面では、やせた株が少数点在して見られるだけで、群生がほとんどない事から推測できます。

このように厳しい環境の中でもなんとか生き残りながら、再び偶然におきる好条件をとらえて子孫へと繋ぐ、これを繰り返しながら今まで生きてきたものと考えられます。

住み分けして自生している並花と変わり花

私が見てきた範囲では淡紫紅色の普通個体は、日が強く当たり乾燥が激しい場所から湿り気のある日陰まで広い範囲に自生していました。

白花、桃花、斑入り、珍奇花など、人間が好むような個体は乾燥が激しい日なたではみられず、穏やかに日が当たり極度に乾燥しない場所にだけ自生していました。おもしろいことに純白花では普通花 (淡紫紅色) とはかなり違う場所に生えている事が多く、湿気が多くやや暗めの環境下で多くみつけることができました。場合によっては常に水がしたたり出るような湿潤な場所にまとまって自生していることもありました。このようなことから変異個体の多くは普通個体にくらべ、適応できる範囲が狭く仮に種子が飛び発芽したとしても、厳しい環境下では生き続けることができないため自生が見られなかったものと考えられます。

このことからも分かるように、人間が特定の形質を選び、交配してできた個体群でも同様で、丈夫な普通個体と変異個体とでは性質が異なる事を理解し、それぞれにあわせた個々の栽培管理が必要となります。

![アワチドリの自生地 (Ponerorchis) - Ranyuen](/assets/images/AWACHIDORI_habitat_NOKOGIRI-YAMA_3_ja.jpg)
自生地から東京湾を望む(対岸に見えるのは三浦半島)

アワチドリの花色 (40年前の自生地にて)

今では品種改良がすすみ多彩なアワチドリですが、自然界に自生していた株の99%以上が淡紫紅色から紫紅色の普通個体 (通称: 並花) でした。

まれにこれらとは異なる花色をした個体が発見されることもありました。おおよそですが、自然界では、白花、桃色花、白紫点花などの変異個体は、並花数千本に対し、1~2本程度、紅一点花 (のどもとが紅色) や無点花 (のどもとに斑のないもの) では並花数万本に対し、1本程度の割合で発見されました。その他、桃赤色 (くれない系) の個体はウチョウランの仲間の中で唯一アワチドリだけで発見され、その数はたったの2個体のみでした。その他にも花の形が変化した珍奇花 (変わり花) も見つかっています。このようにごく少数だけ発見された、変異個体がもとになり育種され現在のような多彩なアワチドリへと進化しています。

余談ではありますが、桃赤花 (くれない系) はすでに30年ほど前にはウチョウランとの交配も行われ、赤花ウチョウランとして出回っていました。

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アワチドリヲサガセ 2015年6月27日 文 : 小川豊明

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