上手な肥料の施し方
肥培するのはいつ
春咲きエビネは、秋に肥培すると、りっぱな花芽をつくり、翌春にりっぱに咲くと思っていませんか? 残念ですがこれは大きな間違いです。春咲きエビネの花芽は秋から大きくなり、冬を越して翌春に花を咲かせます。このため秋からしっかりと面倒をみると、花が良く咲くと思っている人がほとんどです。
育てている株が仮に4月頃に開花したとします。水や肥料をやり、一生懸命育てていたのですが、秋 (9月末~10月上旬) にかけてちょっと油断したすきに、バッタなど (害虫) に食べられて葉のほとんどを失ってしまいました。さて、この後どうなってしまうのでしょうか? 来年は絶対に咲かないと思うのが普通の考えです。しかし春になってみると思っていたよりも良い状態で、新芽が伸び、まあまあの姿で花が咲いたのです。みんなが言っているように、葉っぱを傷めないようにきれいに保ちながら秋に肥培しないとダメと言うのならば、早くに葉を無くしてしまったエビネに花が咲くというのは、おかしな話です。
ジエビネやキエビネなどの一部の種類を除き、7月頃より作りはじめた新芽の中では、つぼみが生長し、秋には翌春に咲く花の数も決まっています。このため仮に10月頃なんらかの事情で葉を無くしてしまったとしても、これまでの面倒が良好であれば、春にはまあまあの状態で花が咲きます。逆に秋以降にどんなに面倒を良く見ても、それまでの管理が悪ければりっぱな花が咲くことはありません。
エビネは花後すぐに肥培し、夏 (7月末頃) までに株に力をつけることで翌年りっぱな花を咲かせられます。秋からは多くの肥料を必要としませんので、新芽や根の生育がそこなわれない程度に肥料を与えるのが良いでしょう。
施肥の実際
固形肥料だけで育てている人、また液体肥料だけで育てている人、その両方を併用している人など、肥料の与え方は各人により異なり、与えている銘柄なども様々です。どれが正しいというのではなく、育てている種類や使用している用土、その他の条件によっても与える肥料の種類や量、方法も異なるのはあたり前のことです。
今までの方法で良く育っているのであれば問題ありません。同じ方法で続けるのが良いでしょう。人に「こうした方が良い」と言われるなどでいきなり全部を変えてしまったために、今までよりも悪くなってしまうこともよくあります。肥料は与え方を間違えると取り返しの付かないほどダメージをあたえてしまうこともあるので注意が必要です。
以下、肥料の与え方について私の考えを記します。
置き肥
エビネはよほど寒くない限り生育が完全に休止することはありません。自生のエビネは地中の温度をはじめ、他の条件が安定しているため、一年を通して常に少量の養分吸収が行われていると思われます。
栽培する場合も植土の表面に緩効性の固形肥料を年間を通し置き肥として施しておくと、水やりのたびに肥料が少しずつ溶け出し、エビネが欲しい時にいつでも利用することができます。これにより自生のエビネに近い条件が整います。しかし、鉢栽培などでは外気温の変化により鉢内 (根) 温度が自然の状態とは異なります。夏期の高温下、冬期の低温下などで肥料をやりすぎると、根を傷め枯らしてしまうこともよくあります。くれぐれも肥料のやりすぎには注意してください。
植土による置き肥の違い
使用する固形肥料の種類は軽石や赤玉土など、有機物をほとんど含んでいない用土で植えた場合、すぐに分解しないタイプの固めの有機質肥料 (骨粉、油かす等を含むもの) を与えることで、有機質の不足を補うことができます。また腐葉土やバークなど有機質を多く含む用土では、緩効性化成肥料 (N : P : K : Mg = 6 : 40 : 6 : 15) だけでもよく育ちます。
肥料は単に与えればよいというものではなく、有用菌 (リゾクト二ア他) の適度な繁殖も考慮し用土に合った種類の肥料を与える事でその効果が大きくなります。
置き肥を施す時期
すぐに分解する置き肥でなければいつ与えてもよいでのすが、遅くても6月上旬頃には効果が現れるようにそれ以前に与えます。以降は効果がなくなる頃を見計らって再度置き肥を与えます。
液肥を施す時期
芽や根の生育が旺盛な5~7月に即効性の液体肥料 (ラン用など) を月に3~5回与え、開花後の疲れ気味の株に体力をつけることで、花芽分化がスムーズにおこなわれます。しかし、根を傷めてしまう可能性があるため、最高気温が30℃をこえる時期は与えないほうが無難です。
秋 (9~11月) には株がすでに充実しているため、多くの肥料を必要とはしませんが、昼夜の温度差が大きくなると芽や根の伸長が旺盛になるため、株の勢力が落ちないように与えます。
与える肥料の種類にもよりますが、通常は与えるごとに葉の緑色が濃くなっていきます。葉がすでに濃い緑色になっているにもかかわらず肥料を与えつづけると、やり過ぎにより根を傷めてしまうことがあるので注意します。液肥は記載されている濃度よりもかなり薄くして使用し、その分回数を増やす (週1回程度) ことで、肥料あたりが避けられます。
多くの株を上手に育てるためには、種類や個体による性質の違いを自分で見つけ、それに合わせた微妙な調節が必要です。
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