ウチョウランの仲間の管理(春夏秋冬)
夢ちどり/アワチドリなど、ウチョウランの仲間の年間管理について、季節毎にポイントを押さえ解説します。
春期 (3月~5月)
極度な凍結が起こらない、比較的暖かい地域(東京周辺)などで、屋外で常温下に置いてある鉢内では、2月下旬頃になるとすでに出芽の準備が整い、球根の頂部にある生長点(芽)は少し膨らみはじめています。 一段の暖かさと水分供給を待っています。 植え土に湿り気があれば、3月下旬~4月上旬ごろには伸長した芽の先端が土の上へと出てきます。 その後も徐々に伸長を続けた芽先は、分かれて左右に広がるように葉を展開させ、生長していきます。早いものでは5月中に小さなつぼみが確認できます。 またクロカミランや早咲き系のウチョウラン(クロシオチドリ他)では5月に開花が始まります。置き場
通常は屋外の強い雨風が避けられる明るい場所で、地面からのドロはねがないような棚の上などで栽培します。 【例:午前中2~3時間の直射光が当たる場所、あるいは直射光は当たらなくても、一日中明るいところなど】 新芽が伸長し、葉の展開期から後には、暗い場所においてしまい、葉に当たる光量が不足すると、ひょろひょろに伸びてしまったり、あるいはつぼみが育たず上手に咲かない事があるため注意します。 3月上旬ごろに、たっぷりと水を与えた後、室内の明るい窓辺などで育てることも可能です。この時植え土にカビが生えるような場合は換気をするか、日中、外へ置くのも良いでしょう。 夜間は室内に取り込むことを忘れずに。水やり
植え土を凍らせない事を条件に、たっぷりとかん水し、球根が吸水することで出芽が促されます。 水ゴケなど乾燥がはげしい用土を使用し一度では十分に湿らない場合は、2~3回連続して与え、植え土にしっかりと湿り気をもたせます。 これにより球根もしっかりと吸水し、水分不足が原因でおこる芽出し時のいじけなどの障害は少なくなります。 鉢内が十分に湿った後は、やりすぎに気をつけ、与える時はたっぷりと鉢底から流れ出るくらいの量を、そして植え土が乾くまでは水やりはせず、乾いたら再びたっぷりと、を繰り返し行い、常時加湿にならないように注意します。→ 水やりの基本
たっぷりと水を与えた後は極度に凍らせてしまうと、球根も凍結し腐らせてしまう事があるため、寒さが予測される時は凍らない場所へ移動するなど、何らかの対策をしてください。作業・その他 ~球根の植え付け~
球根を購入し、自分で植え付ける場合や、植え付け後年月が経過し、植え土が古くなると、根の伸長が悪くなることがあります。また軟質の鹿沼土など、使用している用土によっては劣化が早く、毎年植え替えを必要とする場合もあります。 球根の植え替えや植え付けは初心者の場合、休眠も終わりに近づいた芽がでる少し前の2月~3月初に行うと失敗が少なく、芽を傷めないよう十分に注意して行うのであれば、新芽が少し(10ミリ程度まで)伸びはじめる頃まで行えます。 栽培に慣れているベテランの場合は、休眠期間中はいつでも行えます。時には、開花時に行うこともありますが、植え替え後の適切な管理が必要なため、初心者はまねしない方が無難です。 掘り上げた球根は時として、病菌が付着している可能性もあるため、念のため殺菌剤【例:ポリオキシン, ダコニール, ロブラール等の1000倍液】に1~2時間浸漬した後に植え付けると安心です。方法
球根の上下を間違えないように、小さな突起(芽)がある方を上にして、傷めないように注意して10ミリ程度の深さに植え付けします。この時、芽の部分は絶対にむしり取らないようにし、またいじることもしない方が無難です。 上と下がどうしてもわからない場合は球根を横向きにねかせて植え付けます。芽を下にして植えてしまうと、新芽が伸長する際に自分自身を持ち上げて植え土から球根が飛び出してしまったり、時には鉢底穴から芽を出してしまうなど上手に育たないことがあるため注意します。肥料
与える肥料の量は人により、あるいは植え土の違いにより異なりますが、初心者の場合、生長期は、ハイポネックスなどを規定の濃度をさらに2倍に薄めた、極薄いものを、一か月に2~3回与えるのが普通です。その他注意点 〜灰色カビ病に注意
新芽が伸長して、株元にある芽のカバー(ハカマ部分)が役割を終えて褐色に変わると、その部分には、まっていました、とばかりにボトリチス(灰色カビ病菌)が繁殖し、数日のうちに株元からバタバタと倒れてしまうことがあります。植物が好きで、周囲に植物がある場所で栽培する時には特に注意が必要です。 私の経験では、生長期にウチョウランの仲間を枯らしてしまう原因のほとんどがこれによるものです。ハカマが枯れる少し前の5~6月にかけて予防のため株元のハカマ部分にもかかるように、灰色カビ病に効果のある殺菌剤【例:ポリオキシン, ベンレート, ロブラール, スミブレンド, ゲッター 他】を2~3回散布しておくと、これによる立ち枯れをさけることができます。→ 病害虫の防除
夏期 (6月~8月)
6~7月は開花の最盛期です。 種類や置き場の条件にもよりますが、アワチドリやサツマチドリなど遅咲きの種類も、6月下旬ごろにはほとんどが開花します。 その後、特に極度な高温などの悪条件にさらさなければ、30~50日くらいは、綺麗な状態で花を楽しむことができます。地中では新しい球根も生長しはじめています。特に、アワチドリや夢ちどりなど夏期の高温に強く多花性に改良した種類では、3か月以上開花していることも珍しくはありません。置き場所
適度に明るくて、なるべく涼しい場所が理想です。開花中はエアコンのきいた室内の窓辺など、明るく涼しい場所に置くと花を長い間楽しむことができます。 その場合には以下のことに注意してください。注意点
・鉢内の乾燥が早くなるため限度を超えて、干からびさせないように注意・空調を切る場合は高温に注意
・室内などで長期間、暗い場所へと置いてしまうと、日照不足で新球根の生育がおとるため注意
このためある程度の期間楽しみ、花が終わりに近づいた頃には屋外の明るくてなるべく涼しい場所で育てるのが理想です。
水やり
乾いたらたっぷりと、再度乾いたらたっぷりと与える、を繰り返します。 開花中は花に水がかかると、花持ちが悪くなります。また傷んだ部分には灰色かび病などの病気が発生する事もあります。このため花にはなるべく水をかけないように気を付けて行います。 高温期は、夕方~夜間に葉にもかかるように行います。これにより葉温を下げる事ができ、新球の形成が促されます。肥料
ハイポネックスなどを規定の濃度をさらに2倍程度に薄めた、極薄い液肥を月に2~3回与えると、立派な球根を形成します。 ただし、夏期の高温時に肥料を与えすぎると、根を傷めてしまう可能性があるため注意が必要です。日中35℃を越えてしまうような時は与えない方が無難です。その他注意点
他の植物の枯れ葉などに繁殖する灰色カビ病菌により、株元からバッタリと倒れて枯らしてしまう事があります。このような場合、他の植物よりも少し高めの風通しの良い場所で、カゴなどに収め、上から吊るすようにして育てると被害は少なくてすみます。5~6月、ハカマが枯れる少し前に、予防のため殺菌剤【例:ポリオキシンAL, スミブレンド, ゲッター, ベンレート 等】を散布しておくと、これによる立枯れはほとんど発生しなくなります。秋期 (9月~11月)
クロカミラン他、一部の早咲きの系統では地上部が枯れ始めるものもありますが、多くの株では茎や葉などの地上部には変化はほとんどありません。 アワチドリなど、多花性の種類では、晩秋まで咲き続けている株も多くあります。その他の種類や系統では花はすっかり終わり地中では新球が生育を続けて充実していきます。秋も深まり寒くなると、葉や茎は徐々に黄変した後にやがて褐色となり枯れますが、育て方が悪くなれば新しい球根も出来上がっているはずです。東京周辺など、あたたかい地域ではアワチドリなど開花期間が長期にわたる種類では、もうしばらくの間、茎葉はしっかりと保たれることで新球も充実されます。水やり
低温と茎葉および根の生育が休止することにより、植え土は乾きにくくなります。葉が黄色く変化する頃からは、水やりをややひかえぎみにして、霜がおりるころには、鉢内の湿り気が少なくなるようにすると凍らせる心配もなくなります。その他
褐色に枯れた茎葉は、新球頂部にある芽の部分を傷めないように注意し、やさしく取り除きます。寒くなり、初霜がおりる頃には凍らない程度の寒い場所に取り込みます。冬期 (12月~2月)
12月に入り低温にあたると、アワチドリや夢ちどりなど長いあいだ、花を咲かせる種類でも、茎や葉などの地上部は黄色くなり、徐々に褐色に変わり枯れていきます。 これまで順調に育っていれば、地中には、今年花を咲かせた古球に変わり新しい球根ができています。 この時、初心者は枯れたものと勘違いし捨ててしまわないように気を付けてください。もし、枯らしたと思った場合でも、念のため土の中を確認してください。置き場所
地上部が枯れた後には、枯れた茎葉を取り除き、雨がかからず、温度差の少ない寒い場所(0℃~10℃が目安)に鉢のまま置きます。【例:日が当たり内部があつくならない物置など】
東京などほとんど凍る心配のない地域では、庭先などの雨の当たる場所に置いたままで、越冬させても問題はありません。 ただし、極度の凍結は球根を傷めてしまう事があるため注意してください。 これに対し、寒さが厳しい地域では寒くなる前に水やりを控えて、鉢内を乾かした後、段ボール箱などに鉢ごと収め、極度の凍結がさけられる場所に置きます。
水やり
地上部が枯れた後から、翌春の出芽の時期までは通常、一度も水やりをしなくても問題はありません。 しかし、一部の系統や乾燥が激しい置き場所に置いたため脱水がひどく、限度を超えてしなびさせてしまうと出芽時に障害が起きる事があるため、一か月に一度くらい霧吹きで、植え土の表面が少し湿る程度に水分を与えるとよいでしょう。その他
休眠期ですので肥料および病害虫の防除は必要ありません。ただし周囲に田畑が多い場所では、まれにネズミなどの小動物による食害が起きることがあります。注意してください。ホームへ戻る