ウチョウランの仲間の栽培 - 上級者編
株ごとに異なる癖を知り上手に育てる
ウチョウランの仲間は種類や系統、または個体の違いによっても好む水分量や日の強さの他、生育出来る温度 (特に上限温度) などが異なります。仮に同じ場所で鉢と土を同じくし、同じ管理をしても種類や株の大きさあるいは個体の違いにより、生育には差が生じ、よく育つ株とそうでない株がでてきます。自分が育てようとする株がどのような、種類や系統かをある程度把握する事ができ、その株に適した作場で栽培管理 (水やり他) をすれば通常はよく育ちます。
残念な事に市販されている多くの個体は正確な記録無しに交雑が進んでしまい、種類や系統がわからない場合も多く、慣れない方には適切な管理をできないのが残念です。良く観察し個々の性質を知る事が出来れば、上手に育てる事も可能です。
気象の変化や株の状態に合わせた管理で立派に育てる
近年は夏期の異常な高温をはじめ、通常とは異なる現象がたびたび起こります。それだけではなく、一日の内に起こる変動も大きくなっています。このため、今までの栽培法は通用しなくなってきているのが現状で、今までと同じように育てていると株の勢力が落ちてしまい、結果枯らしてしまうケースも多く見られます。毎年のように不安定な状態が起こる中でも多くの株を上手に育てるにはその時の株の状態や日ごとに変わる気象変化に敏感に対応しその時々の状況に合わせて管理をする必要があります。
まめに観察し、いち早く変化に気付く事が一番大切で、早期に適切な対処をできれば立派に育てる事ができます。これはウチョウランの仲間だけに限った事だけではなく、多くの生き物を育てる場合に共通する事です。難しさを克服し、綺麗に開花した時、喜びは格別なものになる事でしょう。
普通個体と変異個体で性質が異なるウチョウラン
野生種のウチョウランの内だけで言うと普通個体と変異個体 (花色や咲き方が普通とは異なる個体) とでは、性質がかなり異なります。人が好む変異個体を普通個体と同じ条件で栽培すると株がいじけ、ひどい場合には枯れてしまうこともあります。多くの場合、変異個体は栽培に適した条件が普通個体よりも狭い範囲に限られます。変異個体の多くは穏やかな場所においてやや多めの水分を与え、乾湿の差を減らし、極度な乾燥をさけることで良く育てる事ができます。
時間をかけた順化 (広義の意で) が必要
ウチョウランに限らず厳しい自然の中で長い時間生き抜いてきた野生種は、丈夫でかなりの悪条件にも耐えられます。しかし現在流通しているウチョウラン類の多くは、人間が特定の形質を求め、好条件のもと多くの養水分が与えられ特別に管理し、短期間で開花株にまで育てられたものたちです。いわば生まれたときから甘やかされて育った株であり、いきなり野生種と同様に管理したのでは急激な変化に耐えられず枯れてしまうのは当然です。
また人間により作られた株はそれまでの生い立ちをしばらくの間は記憶しているため、いままでとは異なる栽培(環境、条件、方法)に慣れるには少し時間を要します。したがって、このようなことから新しく購入した株や、フラスコ出し間もない株では、しばらくの間、極度に乾燥させないように注意して栽培します。
珍奇個体の栽培は、慣れてから始めた方が安心です
人間が特定の形質を求め、近親交配により作り出した個体は、性質が著しく弱くなりその結果、不稔 (種子が出来ない) や生育不良で根や球根の発育が良くない、あるいは休眠期の乾燥に弱く、出芽がうまくできないなどの障害を伴うこともよくあります。本来ならば、淘汰され、自然界では生きられないような弱い個体でも成株になるまで育てられ、流通しているものもあります。このため趣味家が好んで収集する珍奇個体は栽培に慣れてから栽培を始めた方が無難です。
過去に命名され、現存する個体から推測するとウチョウランの仲間は少なくとも50年以上の寿命があると考えられます。
多くの動植物で共通していえることですが生育が旺盛な若い個体では必要とする水分量も多く年齢を重ねるとともにその量は減少していきます。現在、一般に流通しているウチョウランの多くは、人が種まきをして作った個体でその寿命から考えるとせいぜい10歳程度の若者達です。場合によっては、生まれてから3~4年程度のおぼっちゃま達もたくさん出回っています。このような若い株を上手に育てるには、いきなり今まで育てている株と同様の管理をするのではなく、特に水に関しては多めに与え、年月をかけて徐々に減らし自分の環境に慣らしていくのが、上手に育てるポイントです。
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