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幻のランを求めて ヒメクリソラン編

ヒメクリソラン (Chrysoglosella japonica別名:Hancockia japonica)
〜幻のヒメクリソランとの出会い、奇跡の瞬間〜

そのランはかつて屋久島のモッチョム岳で初島博士により発見され、和名をヒメクリソランと命名されました。しかしその後、私が再発見するまでの長い間、誰も見つけることの出来なかった幻のランです。

私がはじめてタネガシマシコウランを見つけたのとほぼ同時、正確には10秒くらい後のことです。暗紫色で、長さ5㎝程度の葉をもつ見たことのないランが足元に一瞬目にとまりました。しかしその時は直前に見つけたタネガシマシコウランのことで頭がいっぱいで、そのことはすぐに頭の隅に追いやられてしまいました。

樹上でしばらくの間タネガシマシコウランとたわむれ、木を降りたとき、ようやく見たことのない変わったランが一瞬だけ見えたことを思い出しました。改めて周囲を見回してみると、見たことがない、すなわち、新種らしきランは点々と10株程が自生していました。この時、私は「タネガシマシコウランに加えて新種のランも発見した!」と心が踊りました。実は私が見つけたこのランが、屋久島で再発見された幻のラン、ヒメクリソランということになったのです。

植物好きの一人の若者により再発見された幻のラン = ヒメクリソラン

当時、誠文堂新光社の日本のラン関係の書籍の編集長をしていた羽根井氏に報告するため、生標本として2株持ち帰り、その後、すぐに同定のため前川先生のところに届けられました。しばらくして前川先生が言うには、「ヒメクリソランだろう。実物は初めて見ました。」と報告されたことを記憶しています。その後、花を確認するため、鈴木吉五郎氏が栽培にあたったはずですが、どうなったかは聞いていません。

その後、羽根井氏はカメラマンとともにこの自生地をたびたび訪れて、写真におさめると同時に観察を続けていたということですが、花を一度も見たことがないまま自生地の環境が激変し、すべての株が失われてしまったと報告を受けています。ちなみにこのランの写真は葉だけの状態のものが、当時出版された本にヒメクリソランとして紹介されたと記憶しています。

しかし近年になり、信じられないような話が私の耳に届きました。それは生前の初島先生が、そのランのことを「あれはヒメクリソランではなく新種のランだ」と言っていた、というのです。よく考えてみると、私が発見したそのランは、新種として発見時の場所から30km以上も離れた場所に自生していました (通常ヒメクリソランのような超希少種が発見場所近くで発見されずに、30km以上も離れた場所で見つかることは奇跡に近いことです)。また誰も花を見ていなかったにもかかわらず、記載時のヒメクリソランの草姿に似ていたため、ヒメクリソランということになったのです。つまりそれがほんとうにヒメクリソランかどうかであったかは確認できていないというのが真実なのです。

何かとてもミステリアスなランですが、実はこのヒメクリソランだけでなく、私がこれまでに関わった新種および新産の植物たちは、いつも必ずといっていいほどミステリアスな事柄がつきまとってしまうのです。それは、ハガクレカンアオイ、未だに名前も聞いていない八重山で見つけた交雑新種のスミレ、トミヤマフタオラン、そしてハハジマホザキランなどです。そして再発見したはずのヒメクリソランまでもが…。この他に、新種と考えられる無葉のランをもうひとつ見ていますが、長くなるため別のところでお話しします。


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コラム筆者:山本裕之

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