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北限のカシノキラン

 まだ大学生の頃、私はアワチドリを探す目的で千葉県の房総半島によく出かけていて、その日は千葉県の清澄山の裏手にある四方木集落の広場に車を停めて、山中へと向かいました。深い谷をくだり、谷底の沢を渡り、そしてふたたび急な斜面を上ってしばらく歩いたその先に、こんもりと大木が茂る森が見えました。あたりの様子からそこが神社だとわかると同時に、いかにもランがありそうな雰囲気を感じてドキドキしながら速足でそこへ向かいました。予感はみごと的中。頭上へと伸びるイヌマキの太い枝にはおびただしい数のヨウラクランとカシノキランがぶらさがるようにして着生していて両者とも谷底から吹き上げる涼風になびかれるようにぶらぶらと揺れ、今にも落ちてしまいそうになりながらもなんとかしがみついていました。

 約40年ぶりにふたたびここを訪れた私は、社にわずかなお賽銭を捧げ手を合わせた後、斜面から斜めに生えるイヌマキの大木へしがみつきました。幹を登り、横に伸びる太い枝を這うように無我夢中で枝先に着くカシノキランを目指しました。枝先までたどり着いてふと下を見た時、今、自分の身がとんでもないくらいの高い場所にあることに気が付きました。「どうか神様お許しください。写真を撮るだけで悪さをしませんから。木から落とすような罰は与えないでください。」と心の内で唱え、枝にしがみつきながらやっとの思いでカシノキランの着生する姿を写真に撮ることができました。前に見た時よりもかなり株数は減ってしまったようですが貴重な北限のカシノキランの自生地です。

カシノキラン Gastrochilus japonicus

Gastrochilus japonicus

Gastrochilus japonicus
Gastrochilus japonicus

 千葉県から沖縄を経て台湾に分布する着生ラン。北限の千葉県に自生するものはごく小さく、大きくても一枚の葉が4~5cm程度。これを6、7枚交互に重ね合わせたような姿です。夏に淡黄色の小さな花を5~10個咲かせます。南方に行けば行くほど大型となり、西表島あたりのものは葉の長さが10cmほどあり、これが10枚以上重なる様子は本当にこれカシノキラン?と思うほど大型になり、痩せたナゴランと見間違えるほどです。


コラム筆者:山本裕之

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