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いたずらガラスのカー子とカー助

 大学を卒業した年の4月末の春の出来事です。千葉県でもたくさんのジエビネが自生している富津市鹿野山近くの里山へ農大の学生達と訪れた、その帰り道にそれは起きました。

 山中にたくさん開花するジエビネを堪能して車へと戻る道すがら、もう間もなくで車の置いた場所へ着くというところまできたところです。私の気配に驚きゴソガサゴソと落ち葉の上を歩いて逃げ回るような物音がしました。あれ?何?と、そちらの方向に目を向けると、巣立ち直後でしょうか、まだくちばしの周りに産毛を生やしたとてもかわいい赤ちゃんガラスを1匹みつけました。少し離れた場所でも音がして、もう1匹。そしてその先にさらに1匹。全部で合計3匹の赤ちゃんガラスがいました。 目の前にある小さな畑にはお母さんと思われる真っ黒い大きなオオガラスの死骸が、長い竹の棒の先からひもで吊るされていました。私はこれを見てすぐに、この子たちのお母さん殺されちゃったんだな…とわかりました。3匹ともかなり痩せていて、長い間ご飯を食べていない様子だったので、すぐに近くの土を掘り起こし大きなミミズをつかまえてその子たちの口の中に押し込みました。けれど、どの子もうまく食べることが出来ません。特にそのうちの1匹はかなり衰弱して元気がないように感じました。3匹とも車の後ろに乗せて、近くのパン屋さんで買ったパンを小さくちぎり口の中に押し込むと、2匹はなんとか自力でパンを飲み込むことが出来ましたが、一番元気のない1匹は力尽きてそこで息が途絶えてしまいました。

 私と学生達の5人と2匹の赤ちゃんガラスを乗せ、7人乗りとなった車を約50km離れた千葉市の自宅まで走らせました。  その頃うちではたくさんの犬を飼っていました。 そうだ、母が子犬にやっていたのと同じようにドッグフードをぬるま湯でふやかして、割りばしでそれをあげてみようと思い、2匹の口の中にどろどろに溶けたドッグフードを無理やり押し込みなんとか飲み込ませる日々が何日も続きました。

 こうして山で拾ったカラスにカー助、カー子と名前を付け、2匹は庭の片隅に置かれたリンゴ箱の木の巣箱の中で元気に育ちました。やがて私が5,6,7,8個と投げるドッグフードを全てくちばしでキャッチすると、庭にあるモミジの木の穴の中に吐き出し溜め込むようなこともするようになりました。私に近づき靴紐を引っ張ってほどいてしまうようなイタズラも毎日しました。こうして育てられたカラス2匹、カー助、カー子は私に負けないくらいにイタズラ者に育ったのです。

 ある日の事、カー助とカー子に興味を示したオオガラスが空から庭の彼らの前へと飛んできました。私に育てられたカー助とカー子は自分がカラスだとは思っていなかったのでしょう、かなり怖かったのか2匹とも慌てて巣箱の中へ逃げ込み、しばらくの間そこから出てくることはありませんでした。

 またある日の事、囲いの中にある棚の上に置いてあったアワチドリが、何本も地面に落ちていることがありました。あれおかしいな、なんでだろうと思いながら私はアワチドリを再び植え直しました。次の日、またもや。棚の上にたしかに置いたはずのアワチドリが地面に転がっているのです。おかしいな、こんなはずないよな、誰がやったんだろうと思いながらも、また植え付けたその翌日。犯人発覚。囲いの中には、私が大事に育てているアワチドリをくちばしでついばんでは地面へ次々と投げているカー子がいたのです。おそらく私が植え付けるのをいつも見ていたカー助とカー子は、手伝ってあげようと思ったのでしょう。(もしくはただ単にイタズラをしてやろうと思ったのかも。)その後、彼らが入れないように網を下まで張り、それからイタズラされることはなくなりました。カラスは人の行動を見て真似をする相当頭がいい鳥だということがわかりました。


コラム筆者:山本裕之

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