生産者は農高生 〜ラン培養から学ぶ〜 文:小川豊明
時代が昭和から平成になったばかりの頃、田舎の農学校に当時最先端の施設設備を持った無菌室がありました。そこで私はコチョウランの繁殖の授業をしていました。しかし無菌室を利用して作出された洋蘭は、その後温室で栽培をしなければならず、暖房にたくさんの運営費がかかり、苦しい状態だったことを記憶しています。そこで日本原産であり冬期にもあまり暖房費のかからないナゴラン・セッコクを取り入れました。 当時、私の手元には渋谷の路上で売られていたナゴラン、以前三宅島の民宿の女将さんからおみやげに頂いた伊豆諸島産の巨大ナゴラン、鹿児島産のナゴラン、各地産のセッコク、長生蘭がありましたので、これらを利用することにしました。ナゴランというと古くはAerides からSedireaに属名が変更されましたが、またもや近年になり分類が替わり、コチョウランの仲間入りをしPhalanopsis japonicaとなりました。和名は産地の沖縄県名護からついたものです。
まず始めに、授業の中で交配です。これは他の洋ランでも行っていた作業なので生徒達も難なく行えました。そして約5ヶ月後無菌播種の実習です。培地に使った物はごく一般的な2%のハイポネックス培地、コチョウランと同じもので十分でした。発芽するとすぐに培地が褐変してしまうため、数回移植しました。発芽から約10ヶ月、3回移植後の様子。そろそろフラスコから出してあげないとかわいそう。
ごちゃ混ぜで培養中のビン達。セッコクからナゴラン、エビネまで何でも作ってみました。満足なものというと・・・・。
近年になって、ナゴランにはミカン配合の培地がよいと聞きましたが、人手の多い学校では、ノーマルの培養法でも十分な結果が得られました。
フラスコから出すと、環境に慣らすための馴化が必要です。水苔で根を軽くまき、新しいプランターの底に並べていきます。ラップをかけて乾燥を防げばOKです。陽の当たらない明るめの場所、棚の下などで休ませます。 根が伸び始めたら、小さな素焼き鉢やバスケットに移植すれば一人前の株になります。
順調に育てば3年ほどで開花するでしょう。
コラム筆者:小川豊明