初めての奄美大島編

キノエササランを探し求めて奄美大島へ

キノエササラン=それは今でも再発見されていない幻のラン 本当に奄美大島で見つかったのか?

たくさんのサクラジマエビネを見つけたあと、ルンルンの私たちが次に向かうのは奄美大島の宇検村。鹿児島港からキャンピング仕様に改造した私の愛車、みどりのキャラバン号を乗せ、奄美大島の名瀬へ向け出港。「クイーンコーラル走れ」という軽快な歌声を聴きながら大海原を進み、名瀬に着く。名瀬からいくつかの峠を越えたところでひと休み。

キヌラン

雨の中、道路わきの造成地に車を止め、みんなでちょっと用足し、足元にはたくさんのキヌラン(Zeuxine strateumatica)が開花していました。 それはあたかも都会の芝生に生えるネジバナのようで、ここ奄美大島では、キヌランもネジバナのようにこんなにもたくさんあるものなのかと驚きました。

自生するアマミエビネ1
自生するアマミエビネ2

その後も山をこえ谷をこえ、森の中をくぐり抜けるように進み、ようやく目的地の宇検村にたどり着きました。翌日は濃いキリの中、早朝から山中に分け入ると、あたりには点々とアマミエビネが開花していました。はじめて見る自生地のアマミエビネはとてもさわやかで、霧の中で開花していたこともあり、幻想的でこんなにもきれいなのかと感動しました。

奄美大島にて
奄美大島で山野草会のメンバーと

残念ですがここでは目的のキノエササランは見つからず、目に入るのはチケイランの姿ばかりでした。たくさんのアマミエビネの開花を見た後は、目的としているキノエササランを探すため、別の場所に移動することにしました。 散策をしながら山道を歩くこと約30分程、植物を観察している10数人のグループが私たちに追いついてきました。話をすると、島の植物について詳しい先生(お名前は忘れてしまった)の案内で、植物の観察が目的でここを訪れたということでした。私たちもいい機会だと思い、これに便乗して、その先生に島の植物についての事をいろいろと教えてもらいました。

その中に、今では地元奄美のランの写真家として知られている山下弘氏の姿もありました。この時の彼の話では、つい最近、都会から故郷である島へ戻り、植物の観察(特にラン科)を始めたばかりだとの事でした。その際、話の中で、今日明日と名瀬の町中でこのグループ(奄美山野草会?)が主催で山野草展を行っていて、変わったアマミエビネも出品されていることも教えてくれました。 翌日は雨が強く降っていたため、私たちは山へは行かず、山を越え橋を渡りトンネルを抜けてくねくね道を2時間半かけて名瀬に戻り、この展示会を見に行きました。

この時、会場にいた山下氏は私たちに、奄美大島でも特にたくさんの着生ランがある場所を教えてくれました。しかし、そこは島でも最も多くのハブが生息しているといわれている場所で、その後ここを訪れた私たちは、とんでもない体験をするのでした。それは別のところ「私のハブ取り物語」で記すことにして、その後も島内のあちらこちらをキノエササランを捜し歩きまわったのですが、最後までその姿を見ることはできませんでした。 そして今日までに5回も島を訪れたのですが、キノエササランは今でも見つけることができていません。

翌日、私たちは山下氏に教えてもらった場所へ行くことにしました。リュウビンタイやヘゴがうっそうと茂る川沿いの密林を左側に見て目的地へ向かいました。 しかし、残念なことに彼から聞いたその場所は、すでに伐採がかなり進んでいて、たくさんの樹木が切り倒された後でした。よく見ると、伐採されてそこに横たわる樹木には、マメズタランやオサランなど小型の種類だけではなく、シコウラン・キバナセッコク・チケイランなど中~大型の着生ランもたくさんあり、私たちはそれらを丁寧にはがし、宝物のように大切に持ち帰りました。

帰り道、伐採後しばらくの月日が経過したと思われる草むらには、日に焼けた状態で咲くアマミエビネの姿がたくさんありました。 翌日もその場所へ行くと、その日は平日のためか、朝からチェーンソーの音が高らかと鳴り響き、近くでは多くの人が伐採の作業をしていました。 仕方がなく相川君と私はそこをまわりこむように山中を迂回して、作業現場の先にある林に向かいました。しかし、そこもあたりの木々にはペンキで印がつけられており、時間の問題で伐採されてしまうことは明白でした。 辺りを見回すと、林床にはところどころにアマミエビネが咲いていて、近くにはトリガミネカンアオイの姿も点々と見られました。

この場所でのトリガミネカンアオイの発見はこの種の北限を今までよりもさらに北へと更新するものとなりました。

クスクスラン編


コラム筆者:山本裕之

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