クスクスラン編

頭上を見上げるとなんとそこにはクスクスラン

開花するアマミエビネとトリガミネカンアオイが点在してみられる地面に枯れた枝に着いたまま落下してひん死の状態となっているクスクスランをみつけました。上を見上げるとはるか上方にはクスクスランの大株がありました。よく見るとそれは土手の上からまっすぐに上へとのびる樹の地上10メートルくらいにある最下部の枯れた枝、そこにクスクスランがぐるりと巻き付くように生えています。私も相川君も、自生のクスクスランを見たのはこの時が初めてでした。

私はこの樹もおそらくあと数日で伐採されてしまうだろうと思うと同時にそのクスクスランを手に入れる最良の方法がひらめきました。高なる心を抑えながら、急いで車に戻り、タコ糸と細いロープを手にして再びここへ戻ってきました。 近くに落ちている枯れ枝を拾い、それにタコ糸をくくり付け、クスクスランが着生している枝の上方めがけて力いっぱい投げました。 くり返すこと数回、ようやくその枝の上をかわすことができ、よみどおりに糸がするりと下まで降りてきました。すかさず、重しの枝を外し、今度はその糸にロープを結び付けて引きずりあげ、手元まで導いたロープの両はしを強く握りしめ、2人で一気に下に力を加えました。作戦成功。狙い通り長さ2メートルくらいの枯れ枝ごと、大株のクスクスランは地上へと落下したのでした。 私たちはこうして、クスクスランを手に入れることができたのです。

クスクスラン

私が見たクスクスランの自生の様子(日本)

私は、過去に奄美大島で数か所八重山地方でも同じくらいのクスクスラン(Bulbophyllum affine)の自生の姿をみてきました。 私の知る範囲では自生地におけるクスクスランは、他の着生ランとはかなり異なる多くの共通点を感じました。まずひとつは、奄美のところで話したとおり、日当たりのよい枯れた枝にしばしばみられるということです。

また、クスクスランだけが単独で着生していることはまれで、ヒトツバなどのシダ類とともに日当たりのよい場所においてみられることがほとんどです。このように、自生地のクスクスランには2つの点で共通することがよくあります。 これらのことから考えられることは同じ地域に自生が見られるシコウランやオオオサランと比較すると、かなり乾燥に強いことがうかがわれます。また、ニュウメンランと近い場所に自生していることもしばしばあります。

続く


コラム筆者:山本裕之

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