蘭と共に住み着いた生き物の話 (我が家に来た生き物たち?...) 文:小川豊明

私の子供だった頃、昭和40年代の千葉県佐倉周辺では、台地の上では畑が広がり、谷津の低地には耕地整理の進まない、あぜ道の定まらない水田、その回りには雑木林が広がり、ぐちゃぐちゃの農道があるような、トトロの世界が広がっていました。水路には、しみ出した湧水が流れ、サワガニやタナゴ、コブナやクチボソが泳ぎ、池や沼にはイモリが暮らすのどかな地域でした。幼い頃から植物や小さな生き物が大好きだった私は、野原や山の中をかけずり回っていた事を覚えています。現在のようにパソコンやゲーム機などありませんから、村の子供たちは中学生からまだ学校にあがらないような幼児までが一緒に遊んでいました。そんな生活なので、地域の生き物や植物は代々と引き継がれるようにそのありかを知っていました。

農業高校に進学した私は、一層植物、それも蘭にのめり込んでいき、縁あって東京農大へと進みました。そこで出会ったのが、今となっては腐れ縁になっている蘭裕園社長の山本氏、日本全国の島や山々へ誘われるがままに進んで行きました。東京農大野生蘭研究会には、全国の植物好きの仲間たちが居て、長期の休みには、ご実家から色々な植物が持ち込まれ、交換会が行われていました。

我が家にも先輩方から頂いたたくさんの蘭や、植物が所狭しと栽培されていました。そんなある日、庭で植物の植え替えをしていると、袖の中に何やら動く物が・・・!それはなんとヤマビル。今までこの地域では見た事のない物でした。きっと鉢の中にでもくっついて来たのでしょう。その後我が家にはそれまでに見た事の無かった生物が現れるようになってしまいました。その代表が、サツマゴキブリ、小判のように大きく頭に白いラインを持った憎いヤツで、積んである鉢の中などにいます。また家の中に目をやると、子供の頃にはいなかったヤモリが天井を歩いています。きっとコイツもどこかの鉢か山からの来客なのでしょう。ここ20年で、あたりは一変、新興住宅地になってきています。ご近所さんには迷惑な話ですが外来生物が繁殖しています。その代わりに夏の宵を彩ったホタルはめっきり少なくなりました。

クマゼミ
クマゼミ
サツマゴキブリ
サツマゴキブリ
ナガサキアゲハ
ナガサキアゲハ
ヤモリ
ヤモリ
ヤモリ

コラム筆者:小川豊明

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