私のハブ捕りものがたり [1] ~ ヒメハブ編 ~

私たちが初めて遭遇し、ハブと勘違いしたヘボの毒蛇はマムシ(ヒメハブ)だった

私たちが初めて奄美大島へ行った時の話です。 名瀬へ向かう船中で「ハブが出たらどうしようか」と話す私たちのそばにいた島の人だろうか、嘲り笑うかのように「ハブなんていやしない」という小さな声が聞こえてきました。この時、私たちはハブは少ないものなのか(めったにないものなのか)と思いました。そんな折、地元の山で出会った山下氏から教えてもらった着生ランが多くある場所を訪れた時のことです。 橋の手前に車を停め、川沿いに林道を歩いて行くと地面にはトクサランやスズフリエビネがやたらと目につきます。さらに奥へと進むと、そこから見える急な斜面ではかなり伐採がすすみ、辺りには切り倒されたばかりの大木がたくさん転がっていました。川沿いのため、かろうじて伐採されず、わずかに残っている樹木や近くにある倒木には、シコウランがたくさん着生していました。 遠目に左下の川沿いにたくさんのシコウランが着生している大木を見つけた私たちは急いでそこへ行こうとしたその時です。右側の土手の上から三角頭の太ったヘビが「ぼとん」と音を立てて落ちてきたのです。

ハブだ!

私たちは猛スピードで今来た道を20-30メートル引き返し、振り返ってみると何やら聞いていたハブの姿とはかなり違い、なんだかとてもぐずぐずしたへなちょこな野郎と思いながらも、ハブと信じ込んでしまい、私は持っていた用心棒で頭の部分を押さえ込み、首根っこをつかみ、黒色のビニール袋に入れて口を縛った後、棒の先に袋ごとくくり付けて持ち歩いていました。

奄美大島で出会ったグズなやつ・ヒメハブ

そして、近くの山の仕事をしている人にハブを捕まえたことを伝えると、「見せてみろ!」という事になり、恐る恐る袋を開いて見せると、「アッハッハ」という笑い声とともに「それはマムシだよ」と言われてしまった。 実は、私たちはその言葉を聞いてとてもがっかりしました。それというのも、ハブは地元のハブセンターに持って行けば高く買ってくれると聞いていて、それを売り、みんなで地元のおいしいものを食べようという話をしていたからです。 その人が言うには、「マムシでも500円くらいなら買ってくれる」という話でしたが、ハブセンターまで持って行く費用の方が高く付くため、山に放してやりました。 マムシか!どうりでやけにグズな奴と感じたのも不思議なことではありませんでした。

後になって人から聞いた話では、奄美大島には内地と同じマムシは生息しておらず、島(地元)でマムシと呼んでいるのは本当はヒメハブとの事でした。なるほどという事で私たちのはじめてのハブ騒動はこれにて幕を閉じたのですが、その後、何匹もの本ハブ、そして何十匹ものサキシマハブに遭遇し、とても危険な思いをし、命拾いをすることになるのでした。

私のハブ捕りものがたり [2]


コラム筆者:山本裕之

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