カッコウカッコアツモリソウ 文:小川豊明

1987年8月岩手県

同期入学の仲間達に遅れること1年、ようやく大学4年生になった私は、ランの熱冷めやらず、懲りず、就職活動もそっちのけで山に潜っていました。春に卒業した同級生岩手県の多田さんがよく言っていた、カッコウ(アツモリソウ)を探しに岩手県の遠野へ行くことにしました。

当時、上野から青森まで夜行の急行が走っており、私達は夜行の「ゆうづる」号を利用して花巻まで行き、そこから遠野を目指すことにしました。ところがこの急行あまり急ぐ気がないらしく、またあまりリクライニングしないシート、途中の仙台では後から来る貨物列車に追い越される始末。体中が痛くなってしまいました。早朝、花巻では乗り換えようとしたら、石巻線の列車がなく、長いことホームで待ったことを記憶しています。結局遠野についたのは午前10時過ぎになってしまい、上野から12時間以上かかりました。

多田さんの家に電話をしたところ、お婆さまの超ド級のいわで弁での会話にタジタジになってしまい、結局迎えに来てもらったのは夕方でした。軽トラの荷台につかまって約7km程行くと向かいに大きな曲がり家の見える多田さんのご実家です。夕ご飯を頂き、早速カッコウについて聞いてみると、家の裏山にもあるとのことで、草を刈っていないので、わかるかな?春に桃色の花が咲いていたと証言をもらい楽しみになりました。その夜は町の一大イベント「遠野納涼盆踊り大会」が行われるとのことで、また軽トラで町へ行きました。何処からこんなに集まってくるんだろうと思うくらい賑やかな夜でした。

翌日、裏山へ行ってみると、この辺と言うところにはススキと杉が入り込み、カッコウは見つけることができませんでした。仕方ないので、北にそびえる山を目指してトラックを飛ばしました。ほどよく日が当たり、カッコウがありそうな場所を片っ端に見て回りましたが、発見できずエンレイソウ、コオニユリ、クモキリソウしか見ることが出来ませんでした。山の中で大きな岩のところで休憩をしようと話しながら、急斜面を登っていたところ、気がついたら岩が無くなっていました。そうです熊だったのです!皆怖くなってしまい下山!残念!

遠野観光、カッパが淵、千葉家曲がり屋、おしらさま博物館、遠野物語館等見て回って 帰路につきました。帰りにもらった大量のオニグルミの美味しかったこと。

遠野駅
Tさん家周辺
千葉家曲がり屋

東京に帰ってきた後、遠野の多田さんから小荷物が届き、箱を開けてみると芽のしっかりしたアツモリソウの苗が入っていました。お父上様が近隣の方より頂いて来てくださった物とのことで、翌年の「学内春の展示会」に展示をしたようです。

エンレイソウ
もらったアツモリソウ

あれから17年後の、2004年夏に家族旅行で遠野を訪れました。もちろん多田さんのところも寄らせて頂きましたが、岡山にお嫁に行かれたとか・・・あの夏の日の思い出も、もうすっかり昔のことになっていました。


コラム筆者:小川豊明

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