本当にあった怖い話 [2] 八丈合宿事件 文:小川豊明

東京都八丈島 中ノ郷集落 1984年4月

私の話にたびたび登場する八丈島での話です。新入生歓迎採取会として、新入生3人をつれてハチジョウツレサギソウやヒゼンエビネを探しに行ったときの事。日中は比較的穏やかな模様で、八丈富士の麓の草原で、ハチジョウチドリやトンボソウの仲間を見て、大喜びの一行。夕方、少し広くなった原っぱにテント2張り建て、キャンプの体験実習です。わいわいがやがやと食事をすませた頃、何やらゴロゴロと季節外れの雷がやってきました。取りあえず、荷物をまとめ、テントにそれぞれ入りました。暫くすると雨が降り始め、隣のテントと会話ができない程の大雨になりました。稲光がはしり、テントの下(床部分)に水が流れているのが分かりました。テント初心者には少しキツイ初体験です。雨でやる事もないので明日に備えて寝る事にしました。消灯!するとどこからか「ピーーッ」「ポーーッ」何か聞こえます。はじめは救急車かパトカーかと思っていましたが。その音は私達のテントの回りを飛んでいるように聞こえます。その「ぴいいいぃ・・・ぽぉぉぉぉ・・・」近くなったり遠ざかったり、近いときはテントのすぐ上、耳のすぐそばから聞こえます。丁度時代劇に出てくるあんま屋の笛のようでした。これには皆ビックリ!震え上がりました。テントの中から外を見るには、入り口のチャックを開けるか、換気のための小窓チャックを開けるかで、どちらにしても恐ろしく、誰も開けられません。そんな体験をしているうち皆、うつらうつら寝てしまいました。翌朝、天気は晴れ。街まで買い物に行きました。そこで店のおばちゃんに、昨夜の体験を話すと、「あんたら何処にキャンプしとんの?」場所を言うと、「そこらぁは、昭和38年に藤田航空の飛行機が墜落したところで、遭難碑があったでしょう、あそこに行ってはだめ」と言われてしまいました。テントに戻ると昨日は気がつかなかった石碑がすぐそばの林にありました。飛行機事故で亡くなった人が来ていたのでしょうか?? そして、あの音は何だったのでしょう。あんま屋の笛の音を聞くと、今でも思い出します。

<おまけ> 八丈島に実習で滞在していたときに、農家のお婆さんに聞いた話ですが。お婆さんが子供の頃、(昭和10年頃)中ノ郷の集落から、生まれたばかりの赤子がいなくなる事件があったそうです。消防団が村の周りをくまなく探しても見つからず、神隠しにあったと言う事になった頃、夜の三原山から赤子の泣き声がかすかに聞こえ、若い者が山に入り、声のする方向へ行くと、小さな祠があり、その横で元気な赤ん坊が泣いていたそうで、人々はたいそう驚いたそうです。島には昔からテッチメというお婆さんの姿のもののけが住んでいて、山で人を驚かせる迷信があるそうで、この赤ん坊はそのテッチメに連れて行かれたとか、お乳をもらっていたとか言われたそうです。その時の捜索道は今でもあり、祠も確認できます。


コラム筆者:小川豊明

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