本当にあった怖い話 [1] 三宅島調査 文:小川豊明

私達が野生のランを探し求めて通った、伊豆七島の三宅島。そこで2度不思議な体験をしました。それは1983年の噴火(新澪池が噴火・阿古集落が溶岩流で焼失)の後、山の様子を実際に調べ、大学の文化祭で発表しようと仲間9人で三宅を訪れていたときの事。新入生の根性試しを兼ねて、雄山頂上からまっすぐ南の大路池方向へ、ランを探しながら地図と高度計、そして勘をたよりに、山を下っていくことにしました。山頂のカルデラはまだ熱く、所々熱気を帯びていました。そして猛烈な火山灰(2~3cm位の粒)が50cm程積もっていて、道?から外れると大変歩きづらい所でした。下りに入ると今度はズルズルガラガラと木につかまらないと止まれない程でした。大量に灰をかぶったところは木も枯れ、立ち枯れた山林でしたが、そうでないところでは地上1m位の所にセッコクが見られました。しかし林床は厚く灰が積もり、下草を発見する事はできません。あるとすればアリドオシくらいです。普段なら2時間くらいで降りてこられる所を半日かけても山から出られません。それよりも以前は通れた、旧噴火口のような大きな斜面が降りられず、引き返せないは、進めないはでどうしようかと少し怖くなってしまいました。女子は泣き出すし・・・。そんな時仲間の1人が「先輩アレ!と指をさした」その方向を見ると、150m位先の山の中に、赤く透き通ったゴルフボールくらいの玉が横に飛んでいて、しばらくすると線香花火のようにパーッと火花を散らすように消えていきました。

その時のメンバーは全員それを目撃しました。こうなるとゆっくりとしてはいられません。本来は進まない方向と方法でみんな一目散に下へ・・・。気がつくと大路池の畔にいました。

三宅島調査隊 左より、那須・小川・前列菊山・後列中村
今田・田中・伊藤・曽・伊計 9名
噴火の影響で立ち枯れた山林

その日のキャンプは錆が浜に、しかし台風が接近しており、役場の人が来て旧阿古集落の現在は使われなくなった温泉会館へ避難しなさい。との事で。風の吹く中テントをたたみ会館へ移動。温泉はありませんでしたが、公民館のようで中は快適。私達は2階の大広間で反省会、雑談の後就寝。

三宅島調査隊

温泉会館の周りは、一面の溶岩で覆われていて、阿古の集落が溶岩流に飲まれ、ぽつんと一つだけ難をのがれた施設でした。近くには火災と流れ来る溶岩で焼けただれた阿古中学校の体育館も見えて不気味な所でした。その夜、1年生がトイレに起き、1階へ降りていこうとすると、階段をミシッ・ミシッと昇ってくる様な物音が聞こえてきたそうで、当然「ぎゃああー」失禁!です。一緒に寝ていた者もみんな起きてしまいました。それでも、ミシッ・・・懐中電灯を階段に向けると何もありません。ミッシッツ・・。恐怖のほか何もありません。我慢できなくなった今田君、懐中電灯を持って1階へ・・・・・しばらくの沈黙・・・。階段の下から今田君顔にライトを照らしながら「何にも無いよ、トイレ行くならついて行ってやるよ」と平気な顔、取りあえず一段落。しかしそれから暫くして、1階からしっかりした音でスリッパの音パタパタパタ・・・。懐中電灯様々でした。朝までがとても長い夜でした。明るくなってくると話をする者も出てきます。「噴火で一つの集落が全滅した所なので、きっと人のいるところに集まってくるんだろうね・・・」と言う事になっています。

溶岩に飲み込まれた阿古中学校
阿古の街跡


イラスト:M.Tajima

コラム筆者:小川豊明

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