サバイバル日記 八丈島編 文:小川豊明

突然の転落!事件。1987年4月

何度も訪れた八丈島、慣れた所ほど落とし穴が待ち受ける。

八丈島
八丈島

それは、大学4年の春、しばらくぶりの八丈島。後輩4人とエビネを見に行ったときの出来事です。八丈富士の麓に 神門山(かんどやま)という山があります。さほど高い山ではなく、小さな火山です。シマササバランやシュスランの仲間が多く、岩の間に生えるランの写真が撮れる穴場です。以前この島で実習をしていた時に見つけておいた場所です。

私達は島について早速この山に向かい、思い思いの被写体を探して山の中へ入っていきました。その時です、小さな窪地の上を歩いたところ、突然足もとの地面が陥没!バキッ ガラガラ・・・岩穴の中に落ちてしまいました。一瞬何が起こったか分からず、アッと思ったら目の前が真っ暗に、そして穴の上に大量の落ち葉が被さって、真っ暗な中に閉じ込められてしまいました。その穴は、幅1m程で回りは溶岩のゴツゴツした岩で、身動きできません。空気はありましたが、息苦しく、自分ではどこまで落ちたのか分かりません。大きな声を出しましたが、こもった音になってしまい、いかにも狭い穴に落ちてしまったようでした。その時私は何とか這い上がれるだろうと思っていましたが、木の枝が覆い被さっていて身動きできません。この時初めて恐怖を感じ、声を出し続けました。その頃、後輩たちは写真を撮ったり、おやつを食べていたようです。周りを見て、私がいない事に気がついた一人が、私を捜してくれました、そして、青いリュックとカメラがあるのを見つけ、窪地に入ったところ、またズボオッ!と穴に落ちました。九死に一生を得ました。彼の足が私の頭の上にぶつかり、彼は穴に落ちずにすみました、そして私を見つけてくれました。彼が頭の上で大騒ぎをしたため、他の仲間が集まり、救出となりました。穴から這い上がり下を見ると、深さ3m程で軽ワゴン車が縦にすっぽりと入るくらいの岩穴で、火山特有の噴気口跡のような大きな落とし穴でした。もし一人で穴に落ちてしまったらまず助からないでしょう。後輩様々でした。

ハチジョウシュスラン
ハチジョウシュスラン

良く思い出すと、以前この島の農家で実習をしていた時、島で行方不明が出ると、海か、山を捜索、遺留品がある時は海。無い時は山を探す。と言ったような事を聞いた事があります。 そうです、富士の樹海のような場所で、さまよいながら、最後は穴か、木の枝とロープ!に行き着くようです。消防の捜索隊は腰に竹の棒を2本くくりつけ、穴に落ちないようにする!と言っていました。まさか自分が落ちるとは思っても見ませんでした。この体験は本当に死んでしまうかと思った瞬間でした。


コラム筆者:小川豊明

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