トミヤマフタオラン
最近、コラム用の写真を整理しているうちに、かなり昔にトミヤマフタオランのことを書いたことがあるのを思い出しました。自然と野生ラン1988年10月号に私が書いた記事のうちのひとつです。
1981年3月、野生ランの仲間3人で大学の卒業旅行をかねて西表島へ出かけてみた。 連日の雨の中、山ヒル、ハブ、ブヨなどの襲撃に悩まされながら、テント、食料などをかつぎ40日間ほどジャングルの中をハガクレナガミラン、ニュウメンラン、コウトウヒスイランなどの自生地を探す目的で歩いた。
ある日、不思議なカンアオイと、シュスランに近いランを発見した。カンアオイは、標本を持ち帰り、故・前川先生にみていただいたところ新種ということで和名をハガクレカンアオイと名付けていただいた。後になり、あのシュスランに近いランが気になって仕方なく花期を狙って翌年も1人でテントをかついで西表島へ行ってみた。やっとの思いで開花株を数個体持ち帰り、また先生にみていただいたところジャコウキヌランという返事だった。「?」と思いながら、それでは私が今までジャコウキヌランであると思っていた香りの良い大型のランは何だったのだろうか?ひとつ疑問ができてしまった。 それから何年か後、知人が沖縄で発表された文献のコピーを送ってくれた。それには、あの時やっとの思いで西表島のジャングルから持ち帰ったあのシュスランに近いランのことが書かれていた。 日本新産のランで、和名がなかったため発見者の名からトミヤマフタオランと命名したと発表されていた。 その後もまだ見ぬ数種類の野生ランを求めて7回ほど八重山諸島を訪れたが、気をつけてみるとあちこちでこのランをみつけることができ、かなりの数が自生していることがわかった。 草丈10~20cm、花色は白。開花期は春。
コラム筆者:山本裕之