ドラマチック農業のすすめ [5] 〜品種改良のすすめ パート2〜
品種改良の極意 偶然に気づくこと
育種を行う上で最も大切なことは、「気がつく」ということです。
明確な目標をもち、それを目指し計画的に育種するのは当たり前のことですが、それに偶然が伴わなければ、考えられる範囲の当たり前のものしかできません。
私の経験上では、育種する中で目標とは異なる他の素晴らしい要素をそなえたものが偶然 出てくることはよくあります。この時点でそれに気づき生かすことができるのならば新た な方向性を持つ品種群に発達させることも可能です。 しかし残念なことに、感覚的にとら えることをせずに機械的に育種を行い、目的にそぐわないものは切り捨ててしまう人達も 多くいます。これではせっかく天が授けてくれた素晴らしいものを見逃してしまうことに もなりかねません。
植物はもともと色々な要素を持っているので、人為的に操作をしなくても種をまいてたくさんの個体を育てれば、外観からは予想出来ないような素晴らしい可能性を秘めた個体があらわれることがしばしばあります。
そう感じる理由の一つとして、現在流通している優秀品種の元になったものの中には、 人が考えて作ったものではなく自然の中や栽培中に偶然に出現したもの、あるいはそれを その後うまく利用しただけにすぎないものが多くあります。 つまり、大切なことは、与えられたその偶然に気が付くかどうか、でありあとはそれを上手に利用するための知恵があるかないかが品種改良の鍵となると私は考えています。いずれの場合もその二つがなければ現在に至ることはなかったと思われます。
小学生の時には普通だった子が、大人になって会ったらスタイル抜群の美人さんになっていた、なんてことありませんか?子供の時点で将来どのようになるかを見極めることはか なり難しいことです。植物も同じです。 早期には普通に見えたり、あるいは目標とする方向にそぐわないもの(例えば大きいもの を目的としている時に出来た小さいものだったとしても、すぐ切り捨ててしまわずにしばらく育ててみたら、それが抜群に糖度が高かったというようなこともあります。 なんでも多方面からとらえる広い視野を持ち、どう利用できるかを想像してみましょう。 経験を積み、ダメダメダメ!の考えが、イイネイイネそれもイイネ!ととらえられるように変われば、多様な品種が生まれ農業は発展していくと私は考えています。
大切なことは偶然に気がつくことです。そしてそのコツは、よく観察することです。
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コラム筆者:山本裕之