農業の未来を創る農高生たち [5] 食品と食生活について ~食品科学科に入学して見えたもの~
千葉県立清水高 食品科学科 古谷有生乃

中学生活の終わりが見え始めた秋頃「本当に便利になったわ・・・」と、ふと母が口にした一言。 はじめは、何を言っているのかと思い、気になった私は、母に尋ねると「ご飯を作り忘れちゃったけど、コンビニで買ってきたのよ。」と笑いながら答えてくれた。当時、当たり前に生活をしていた私には、コンビニで食事を買うのが当たり前になっていた。

コンビニ弁当の食卓

私は、今年度から清水高等学校の一年生として、食品科学科に在籍しています。授業では「食品製造」「食品化学」「微生物基礎」「農業科学基礎」など、様々な食品に関することを学習しています。はじめの頃「食品」の部分は簡単に想像出来ましたが、製造?化学?微生物?とは、何だろうと思いました。よく、耳にする言葉ですが、一体何を勉強するのか、と思いました。ドキドキしながら初めて農業科学基礎の授業を受けました。はじめに、「食育」の話しをしてくれた先生がいました。「あ、この言葉は聞いたことがある」、と、ただその時の気持ちはよく覚えています。食育とは、一つ目に「正しい食習慣を身につけること」、二つ目に「健康的な食生活を実現すること」、三つ目に「しっかりとした食品に関する知識と食品を選択する判断をしっかりとすること」、最後に「地域に根ざした食の文化を次世代に引き継いでいくこと」だと、大きく四つに分けて教えていただきました。

はじめて、食育という言葉の意味を知りました。この「食育」の話しを聞いて、私は自分の立場から考えるようにしました。まずは、正しい食習慣とはいったい何なんだろうと、調べることから始めました。知識がまだまだ乏しかった私は、食するだけなのに正しい?間違いなんてあるのかと、はじめは疑問にも感じていましたが、高度経済成長に伴い、食の欧米化が進み日本の食生活が大幅に変化しました。とくにファストフードが流行し若年生糖尿病が増加しました。便利になった一方、「身体にも良くないとわかっていても、食べてしまう事が当たり前の世の中になっています。」やはり食べ物は、健康を維持していくために必要不可欠なもんであり、命のあり方に直結すると私は考えています。 食品の授業を受けているうちに、正しい食習慣を送るために、しっかりとした知識を習得し一人ひとりが食品のこと、栄養素についてよく理解しないといけないことがよく分かりました。それが正しさへの道なのだと。 しかし、最近は家でご飯を食べる個食が減った一方で、外食チェーン店を利用したり、コンビニエンスなどで食事を済ましてしまう人が沢山いると思います。学校で友達と会話をしていても「今日、ファミレス?コンビニ?」といった感じです。

食品の摂取だけを考えれば、ファミレス・コンビニエンスだけでも充分だろうと思いますが、栄養面の偏りや食品添加物が多量に使用されている物を口にするのに何も抵抗していないことに不安な私がいます。皆さんも同じような思いをされた方もいらっしゃるのではないですか。不安に思うということは、改善させる必要があると私は強く思います。どのように改善すればいいのかを考えたとき、先ほども述べたとおり今一度、食育の大切さを考え直してみませんか。それが健康的な食生活、正しさへの第一歩だと私は思います。

今、現在食品に対する不安は消えてはおりません。それは、昨年の3月に起きた東日本大震災における福島の原発事故です。農業科学基礎の授業で栽培している作物も放射能測定の対象となり、とても身近に放射能の影響を感じました。何気なく買い物に行っていたスーパーで売っている作物に対しても放射能の不安をもって購入しない消費者が多くいるのが今の現状です。安全と確認されている農作物に対しても不安を感じて購入しないことは、農家のため、ひろくは日本のためにはならないと思います。今、私ができることは、農業を学ぶ1人として、日本で栽培された農作物を消費して少しでも貢献できればと思います。しっかりとした食品を選択する判断力をこの3年間で身につけ、私だけではなく、家族、友人、近所の方々に食品を正しく選択させられるよう努力していきたいです。

また、先日の話になりますが、先輩方の企画した商品「シフォンケーキ 醤油風味」がサークルkサンクスにて販売されました。 これは、地域色を活かした商品作りで、清水高校のある野田市は、醤油の町であり、醤油を活かしたスイーツ作成を先輩方がおこなっていました。学校にて試食会が行われ、食べる前は、「醤油とスイーツってあうのかな」という気持ちが強かったのですが、いざ試食をしてみると、とても優しい口当たりで美味しく頂くことが出来ました。これも、食育で教えていただいた、地域に根ざした食文化の新しい形を清水高校から発信していることだと思います。私も、醤油の町、野田に生まれ育ったので、地域に根ざした食を考え出せればいいと思いました。 食育について考えると、とても幅広く、食の大切さを実感しました。そして、食育を真剣に考えることが、私たちや子ども達にの未来にに必要で重要なことだと改めて思いました。

私たちは、気づかないうちに便利な世の中に浸かっていました。いったい、いつからでしょうか。昔、物が貴重だった時代、物は大切に扱い使える物は直すなどして長く使うという良い伝統があったそうです。しかし、今の世の中は便利になり、新しい技術によって人々の生活は過ごしやすくなりました。24時間営業のコンビニやスーパーも増え、いつでもどこでも欲しい物が買えるようになりました。要らなくなった物は簡単に捨てたり買い換えたり、私たちの生活が便利になる反面、売れ残った食料品や農産物はすぐに廃棄されるなど食材の無駄づかいや過剰な生産をしないような配慮が、見えてきません。人々が便利さばかりを追求するのではなく、今一度必要な部分と不必要な部分を考え、生活を見直していく必要があると感じます。

中学生の頃、母が口にした「便利になったわ…」という言葉が少し理解できた気がしました。やはり日本人として、身土不二の言葉にあるように、住んでいる地域で採れた物を食べる事が、身体に良いことであり、地域で収穫した野菜を消費することで、地域、広くは日本の食料自給率向上につながると私は考えています。便利な世の中にあって、当たり前が当たり前と思わない生活を心掛けること。これからは一人ひとりが意識をして、やれる事をコツコツとやっていきたいと思います。家族団らんの中で同じものを食べる食生活を送ることが大切だと私は信じています。 以上で発表を終わります。

大切な食卓

農業の未来を創る農高生たち [1] 〜僕は行きます!〜 文 : 千葉県立清水高 片山晃熙

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農業の未来を創る農高生たち [3] 〜もったい世の中〜 文 : 千葉県立清水高 宍倉由貴

農業の未来を創る農高生たち [4] 〜ソーラークッカーのすすめ〜 文 : 千葉県立清水高 食品科学科 ソーラークッカー研究班

農業の未来を創る農高生たち [6] 〜自分から始めよう〜 文 : 千葉県立清水高 徳永美登里

農業の未来を創る農高生たち [7] 〜私たちの食生活について〜 文 : 千葉県立清水高 張替夏海

農業の未来を創る農高生たち [8] 〜環境破壊について考える・・私がこれからやっていくこと〜 文 : 千葉県立清水高 徳永美登里

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