食のお話し [2]

食を大切にしていますか?

 「食」ということばを聞いて、皆さんはどのようなことを思い浮かべますか。毎日を忙しく過ごしている人々の多くは、お腹がすくから食べるのであって、おいしいかまずいか以外は特に気にしていないかもしれません。

 もしそうならばそれはとても残念だと私は思います。

 なぜなら、食事という行為は単に栄養を得るだけではなく、人のこころまでも育て養う大切なことであるからです。しっかり味わうことで、感性や食材に対する知識などが備わるだけでなく、おいしいものを食べておいしいと感じることで、多くの人は幸せな気持ちになり、身体だけでなく、こころも満たされるのです。

 特に育ちざかりのお子様がいるご家庭では食事に気をつかう必要があると思います。小さなお子様をお持ちのご家庭などでは忙しさのあまり、この大切な食事をないがしろにしてしまい、まるで子供たちにエサを食べさせるような食事をさせてしまうこともあるかもしれません。しかし、原型をとどめず、何からできたものなのか、もとは何なのかわからないような食品ばかりを食べているとしたら、感覚に優れ、心豊かな大人へと成長させるのは難しいのではないでしょうか。

 家庭内の食事や学校給食では「おいしいね」で会話を終わらせず、おいしい理由についても話すことで、食に関する知識だけではなく、子供たちの感覚、感性そしてこころをも育まれるはずです。

 日本には四季があり、その折々の季節感あふれる食材がいっぱいあります。季節感や本来の特性をぞんぶんに感じられるような日本の農水産物を使った食事は、感覚を養うのにうってつけで、感性を豊かにし、こころをも育むことができると考えています。

 さらに、どんな風に作られたかを考えることで、料理を作ってくれた人、また料理に使われる食材を生産あるいは収獲した人への感謝の気持ちも生まれ、食の大切さへの理解も深まれば理想です。

 単に栄養素をとるためだけの食事はエサを食べるのとあまり変わらないのではないでしょうか?人にとって食事はこころをも育てる大切な行為であり、食べることから学べることもたくさんあります。

 せっかく世界でも有数の多彩な食材に恵まれた日本という国に生まれながら、それを知らない、または利用しないで、忙しさのあまり味わうことをせず、口に入れるだけの食事をするのはとても残念です。忙しい生活の中で毎日手間のかかる食事を用意するのは大変なことだとは思いますが、時には日本独自の季節感あふれる食材をつかい、その持ち味を感じる食事をすることを心がけてみてはいかがでしょうか。小さいお子様のいるご家庭に限らず、多くの人がしっかり味わい食べることを通して、いろいろなことを考え、そして学んでほしいと願っています。

⇒ 食のお話し [1] 新食育学

四季を感じる里山料理

コラム筆者:山本裕之

「宙から見れば」へ戻る

「自然人のコラム」へ戻る

ホームへ戻る