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ウチョウランの種類

ウチョウラン属 (Ponerorchis) 原種

ウチョウランの仲間を説明するにあたっては、いくつか知っておきたい事柄があります。広くは学名の一部ポネロルキス Ponerorchis (属名) に対し、日本名ウチョウラン属 = ウチョウランと呼んでいます。そしてその中にはいくつかの種 (変種を含む) があり、それぞれにウチョウラン、アワチドリ、クロカミラン、サツマチドリ、ヒナチドリ、ニョホウチドリなどの和名がつけられた種類があります。つまり、ウチョウラン属 (グループ) の中にさらにウチョウラン (P.graminifolia) というひとつの種もあり、グループ名なのかその中のひとつの種名をさしているのかがわかりません。このためランの専門家の間では属をさす場合にはポネロルキスと呼ぶことが普通です。

近年はDNAレベルでの調査も行われており、今後大幅な分類の変更も考えられます。

ラン科 ウチョウラン属 Ponerorchis (ポネロルキス) 原種

和名 (種名) 種名 地域 開花時期 (自生地)
ウチョウラン graminifolia 本州北部~九州 5~8月
アワチドリ suzukiana 千葉県房総半島 6~7月
クロカミラン kurokamiana 佐賀県黒髪山周辺 5~6月
サツマチドリ micropunctata 鹿児島県下こしき島 6~7月
ヒナチドリ chidori 北海道~本州 6~7月
ニョホウチドリ joo-iokiana 関東~中部 7~8月

ウチョウラン (graminifolia)

ウチョウラン (平戸島産) (Ponerorchis) - Ranyuen
ウチョウラン (平戸島産)
ウチョウランの自生の様子

本州北部~九州に自生、斜面の岩場だけでなく、地域によっては大木の幹にコケとともに自生していることもあります。産地により早咲きから遅咲きまで (5~8月) さまざまな系統があります。ちなみに鬼怒川上流の女夫渕付近や軽井沢の近くでは7~8月頃ハイキング道などの頭上にある岩で開花している様子が今でもみることができます。

山野草としてはガンコラン、テバコチドリ、クロシオチドリなどの呼び名がつけられたもの以外にも特徴のある集団が各地域にあり産地ごとに分けられ楽しまれていました。

一茎に5~10花、この仲間としてはやや大きめの花を咲かせ、花の変化が多く主に山野草として楽しまれています。北関東を中心に全国に愛好家がいます。関東以北の系統ではやや冷涼地に自生していることが多く、少々暑がるため、都市部周辺で初心者が栽培するには少し難しくなります。クーラー室など涼しい場所が確保できれば良く育ちます。

アワチドリ (suzukiana)

アワチドリ (Ponerorchis suzukiana) - Ranyuen
アワチドリ
アワチドリの自生の様子

千葉県の房総半島にのみ自生。原種は距の大きさと特徴のある咲き方でウチョウランとの区別は容易です。川沿いの斜面などウチョウランよりも水気の多い場所に自生が見られ葉の枚数が多く、その分蒸散量も多くなりウチョウランよりも水分を好みます。

大きく作ると一茎に100花以上咲くこともありますが、ウチョウランよりも花は小ぶりで葉の枚数も多いため人により好き不好きがあります。

アワチドリという和名は発見者、鈴木吉五郎氏の話では「亀山から清澄山に行く途中、上総の国からわずかに安房の国に入った場所、清澄山四方木付近で発見したため付けた」とのこと。しかし実際には安房の国よりも上総の国に多く自生しています。低山に自生するため日中の暑さには強いのですが、夜間なるべく涼しくなるように心掛けます。

クロカミラン (kurokamiana)

クロカミラン (Ponerorchis) - Ranyuen
クロカミラン

佐賀県黒髪山とその周辺地域に自生します。焼物で有名な町、有田の駅周辺や神社の裏山など、人里近くの山でも見られましたが、採取により激減してしまいました。開花期に竜門ダム周辺を訪れると今でも人の手の届かないところに点在して開花する様子が見られます (要双眼鏡)。

自生地では5~6月頃に開花します。細い花茎に2~3枚の葉を付け同じ仲間の中でもっとも弱々しく感じられますが、見た目よりも以外と丈夫です。草丈は10~20cm程度で花間をあけ清楚な花を10~15花くらい咲かせます。花色変化が少なく品種改良もほとんど行われていないため、いまだに山野草の風情を残し、郷土の花として地元 (九州地方) を中心に楽しまれています。ウチョウランよりも若干早めに新球が形成され、新旧2つの球根が並びランの語源ともなったオルキスに近い姿となります。

自生地ではヒナランと一緒に生えている様子も見られますが、これら2種間の雑種は見当たりません。人工交配では二種間の雑種も作り出されています。

サツマチドリ (micropunctata)

サツマチドリ (Ponerorchis) - Ranyuen
サツマチドリ
サツマチドリの自生の様子

昭和の終わり頃に鹿児島県下こしき島で発見された種類。その後、前川博士によりP.kurokamiana var.micropunctataとされました。発見当時はクロカミランが種として扱われ (P.kurokamiana) その変種としてvar.micropunctataが発見されたことで、分類学者のレベルの高さに多くの人が驚かされました。

距は短く、花はクロカミランに似て多くの斑点を生じます。違いはクロカミランよりも多花性で開花時期が遅く、6~8月頃に咲きます。

自生地は断崖絶壁が連なる海岸の岩場~山間部の急斜面で、強烈な西日が当たり、夏期40℃以上になる所にもたくさん自生しています。暑さのため8月頃にはすでに地上部は枯れているものも多く他のウチョウラン類のように冬期休眠するというよりも暑さのための休眠 (夏眠) するものが多くみられます。性質は暑さに強く大変丈夫ですが、他種のように日光を抑えると間伸びし葉がだらしなくなるだけでなく、上部にダンゴ状に咲くため見栄えが悪くなります。葉が焼けない程度に明るい場所におくと増えやすくなります。

ヒナチドリ (chidori)

ヒナチドリ (Ponerorchis) - Ranyuen
ヒナチドリ
北海道から四国にかけてのブナの樹林帯に自生。ブナ、トチ、カエデ類など、落葉樹の古木の樹上や倒木上にコケ類や他の植物とともに生えています。葉は通常は1枚で夏頃、淡紫紅色の小花を5~15花程度咲かせます。

ちなみにウチョウランとの交雑種がかなり以前に鈴木吉五郎氏により作出されスズチドリと呼ばれています。また北海道の一部に自生するものをチャボチドリと呼ぶこともあります。

以前は山野草として趣味家により栽培されていましたが、夏の暑さが苦手で都市部での栽培は難しくなります。

ニョホウチドリ (joo-iokiana)

ニョホウチドリ (Ponerorchis) - Ranyuen
ニョホウチドリ 1
ニョホウチドリ (Ponerorchis) - Ranyuen
ニョホウチドリ 2

和名は日光の女峰山で発見されたことに因みます。日本の中部から関東にかけての高所に自生します。他のウチョウラン類とは異なり、明るい草原に他の植物とともに自生していることがほとんどです。自生地では7~8月に開花します。

ポネロルキス属として扱われていますが、分類にはやや疑問があり変更も予想されます。花色変化は少なく、暑がることもあり、また種の保護の問題もあり一般に栽培されることはほとんどありません。

夢ちどり (ウチョウランの仲間の園芸品種群)

ウチョウラン (P.graminifolia) に対し、さまざまな種類が交配された雑種もたくさんあります。これらは正確な記録が残されることは少なく交雑化が進みすぎてしまったために、外観から種を特定することは不可能な状態になっています。それにもかかわらず見た目だけでの種類や系統の判断がいまだに行われており、場合によっては扱う地域や個人によって適当に種類が決められてしまうこともよくあります。このため両親が同じ子供たちでも個体ごとに種類が異なり、ウチョウランになったりアワチドリになったり、あるいはサツマチドリ系と呼ばれるなどの混乱が生じています。

自生地周辺の地域では、山野草として人気があるウチョウランですが、都会では夜間温度が下がらないために一般には上手に育てられないこともよくあります。

今から25年程前、蘭裕園は、花色変化に富み丈夫で誰にでも育てられる園芸種としてのウチョウランの仲間を作り出す目的で種内交配だけではなく、アワチドリ・サツマチドリ・ウチョウラン・クロカミラン等を交配の親とした、交雑 (交配) をこころみました。その後に、育種が進むことによりおこると予想される混乱をさけるため、原種 (純粋種) との区別をハッキリさせるため、蘭裕園が作り出した交配種群に対し「夢ちどり」という名称を与え、特許庁へ登録しました。

現在は改良がすすみ、より多くの花色変化があり、ウチョウラン (P.graminifolia) とはかなり異なる園芸品種群「夢ちどり」として知られています。特徴はアワチドリ、サツマチドリを主体に育種されているため、ウチョウラン (P.graminifolia) にくらべ、距の短いものが多く、夏の暑さに強く丈夫で、たくさんの花を長い間咲かせる強健多花性グループであることです。


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